ホンダ「S2000」は、1999年4月、同社としては「S800」以来となるFR方式の2シータースポーツカーとして発売されました。プラットフォームやパワートレインは専用設計のもので、「NSX」以来のホンダ渾身のスポーツカーに仕上げられていました。スタイリングは、際立った個性はないものの、ロングノーズ・ショートデッキの古典的なプロポーションを備えたバランスの良いものでした。
軽量ボディにパワフルなエンジンを搭載
ボディサイズは、全長4,135mm×全幅1,750mm×全高1,285mmで、同クラスのライバルであった「メルセデス・ベンツ・SLK」や「BMW ・Z3」よりも若干大きいサイズでした。ソフトトップを備えるコンバーチブルボディは高剛性と軽量化の両立が図られ、トップは電動式で僅か6秒で開閉が可能でした。車両重量は1,240kgで、前述したライバル達よりも軽量でした。
サスペンションは4輪ダブルウィッシュボーン式、ブレーキは前ベンチレーテッドディスク/後ディスクで、デフにトルセンLSDが装備されていました。エンジンは、VTECを搭載した2L直4DOHC NAのF20C型で、250ps/8,300rpmの最高出力と22.2kgm/7,800rpmの最大トルクを発生しました。又、フロントミッドシップマウントとする事で、前後重量配分は50:50を実現していました。
最高出力はリッター換算で125psにも達する、自然吸気エンジンとしては驚異的なもので、同じ排気量のエンジンを搭載するBMW・Z3の150psを圧倒的に凌駕するスペックでした。一方、ピーク出力とトルクの発生回転数から示されるように、高回転高出力型エンジンの典型(レブリミットは9,000rpm)であり、扱い易さよりもトップエンドの伸びを重視した性格でした。
6速MTやVGSで走りを追求
組み合わせられるトランスミッションは、専用設計の6速MTのみが用意され、ATモデルも用意されたNSXよりも硬派なキャラクターでした。そして、2000年7月に、可変ギアレシオステアリング「VGS」を装備したグレード「タイプV」が追加されました。VGSは、機敏なハンドリングを追求し、ロック・トゥ・ロックがノーマルの2.4回転から1.4回転へとクィック化されているのが特徴でした。
次いで2001年9月のマイナーチェンジで、装備の変更や足回りのセッティング変更などが行われました。更に、2003年10月のマイナーチェンジの際には、フェイスリフトを行いエクステリアのイメージが刷新された他、ボディ剛性やブレーキ性能の強化、再度の足回りのセッティング変更などが行われました。
排気量アップとVSCの追加
2005年11月に行われたマイナーチェンジの際には、エンジンが2.2LのF22C型に置き換えられ、型式が変更されました。エンジンのスペックは、最高出力が242ps/7,800rpmへと若干ドロップし、最大トルクは22.5kgm/6,500rpm~7,500rpmへと僅かに向上しました。共にピーク値の発生回転数が下げられた為、扱い易さが向上しました。
2007年10月に最後のマイナーチェンジが行われ、横滑り防止装置「VSC」が装備されました。同時に、それまでの「タイプV」に代わり、専用エアロパーツや専用チューニングのサスペンションなどを装備し、走行性能を更に追求した新グレード「タイプS」が設定されました。こうして熟成が進んだS2000でしたが、販売台数の低迷の為、2009年8月を持って生産終了となりました。