トヨタは、1967年5月に高級スポーツカー「2000GT」を発売し、その余勢を買って同年8月にエントリー版ともいうべき「1600GT」を発売しました。専用設計のボディとシャシー、一から新開発されたエンジンを持つ2000GTとは異なり、1600GTではコストダウンと生産性を優先し、「コロナ・ハードトップ」のコンポーネンツを流用・強化する手法が取られました。
ボディサイズは、コロナ・ハードトップと全く同一の全長4,125mm×全幅1,565mm×全高1,375mmで、ホイールベースも2,420mmで変わりなく、車両重量のみ50kg重い1,030kgでした。外観上の相違点は、フロントフェンダー部に設けられたエアアウトレットやエンブレムの違いなど、僅かなものでした。しかし、ボディの補強により剛性が高められるなど、目に見えない改良が行われていました。
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DOHCエンジン搭載で優れた性能を実現
エンジンは、ヤマハとの共同開発による9R型が搭載されていました。これは、「コロナ・ハードトップ1600S」に搭載されていた1.6L OHV4気筒シングルキャブの4R型エンジンをベースに、シリンダーヘッドをDOHC化すると共にSUツインキャブに換装するなどのチューニングを施したものでした。
トヨタ1600GTの動画
スペックは、最高出力110ps/6,200rpm、最大トルク14kgm/5,000rpmで、最高出力は4R型を20ps上回るものでした。1600GTのグレードは、トランスミッションの相違により「GT4」と「GT5」の2種類があり、前者は4速MT、後者は5速MTが搭載されました。駆動方式はコロナ同様FR方式で、動力性能は最高速度175km/h、0-400m加速17.3sという、当時としては一級の性能を発揮しました。
足回りやブレーキを強化、内装もスポーティに
サスペンションは、コロナ同様の前ダブルウィッシュボーン/コイル式、後リジッドアクスル/半楕円リーフ式ながら、スプリングレートが高められ、リアにはトルクロッドが追加されるなどの強化が行われていました。ブレーキは、4輪ドラムブレーキだったコロナに対し、フロントがディスクブレーキ化されていました。
インテリアは、黒一色の精悍なイメージに纏められると共に、ダッシュボード上にはスポーティな丸型4連メーターが装備されていました(コロナは横型のスピードメーターのみ)。又、フロントシートは2000GTと同一のバケットシートを採用し、本格的なスポーツ走行に対応していました。居住性は、当然とはいえコロナ・ハードトップと遜色なく、この種の車としては優れたものでした。
生産期間は僅か1年余りで、生産台数も2,222台に留まりましたが、同クラスの「日産・ブルーバードSSSクーペ」や「いすゞ・ベレットGT」と並ぶスポーティカーの雄として、独自の存在感を示しました。又、レースでも輝かしい戦歴を残すなど、短い生産期間ながら一時代を築きました。