ランチアは1975年のジュネーブ・ショーで、小型車「ベータ」のコンポーネンツを流用した2シーター・ミッドシップ・スポーツカー「ベータ・モンテカルロ」を発表しました。同じくミッドシップ方式を採用する少量生産のスーパーカー「ストラトス」が既にデビューしていたものの、量販モデルとしてはベータがランチア史上初となりました。
斬新なスタイリングが特徴
当初はフィアット・ブランドの小型ミッドシップ・スポーツカー「X1/9」の上級車種として計画され、「X1/20」のモデル名で開発がスタートしたものの、最終的にブランドイメージの高いランチア・ブランドが与えられる結果となりました。ボディのデザインと製造を手掛けたのは、X1/9のベルトーネではなく、ピニンファリーナでした。
スタイリングは直線基調のボディラインを持つモダンなもので、加えてプラスチック製の黒いノーズやキャンバス製のルーフが採用されるなど、斬新な試みが行われていました。ボディサイズは全長3,813mm×全幅1,696mm×全高1,190mmで、ベータクーペよりも全長が短く、かつワイド&ローなディメンションとなっていました。又、ホイールベースはそれよりも50mm短い2,300mmでした。
ランチア ベータ モンテカルロの動画
控えめなスペック
車両重量は1,040kgで、ベータクーペより50kg程増加していました。サスペンション形式はベータ系同様の4輪ストラット式ながら、リアサスペンションは新設計の物が採用されました。エンジンは、ベータのベルリーナやクーペにも搭載される1.8L直4DOHC(最高出力120ps/最大トルク16.8kgm)で、トランスミッションは5速MTが組み合わせられました。
動力性能は最高速度190km/h・0-400m加速16.3sで、スポーツカーとしては控えめなものでした。ブレーキは他のベータ系と同様4輪ディスク式で、タイヤサイズはベータクーペよりもワイドかつ小径な185/70HR-13が採用されました。ベータ・モンテカルロは「スコーピン」の車名で北米にも輸出されたものの、排出ガス規制対策により最高出力は85psにドロップしていました。
又、現地の規格に適合させる為、ヘッドランプがオリジナルの角形2灯式から丸形2灯式に変更されると共に、前後に5マイルバンパーが装着され、本来のスタイリングが若干スポイルされていました。そして1980年にマイナーチェンジを受けシリーズ2となり、フロントグリルの意匠変更と共に、リアクォーターに後方視界向上の為のウィンドウが新設されました。
同時に、エンジンの圧縮比が高められ最大トルクが17.4kgmに向上、最高速度が192km/hへと僅かながら向上しました。又、ブレーキディスクが大径化されると共に、タイヤサイズが185/65HR-14へとインチアップされました。その後は大きな変更もなく生産が続けられ、1984年に他のベータシリーズと共に生産終了となりました。