ランチアは2004年のパリ・サロンで、ミニバン風ハッチバックの「ムーザ」を発表しました。プラットフォームをフィアットのコンパクトカー「プント」やミニバン「イディア」と共有し、ボディは基本的にイディアと共通ながら、ランチアならではの内外装を持つ個性的なモデルに仕立てられています。
一目でランチア車と分かるエクステリア
ボディタイプはワンモーション・フォルム風の5ドアハッチバックで、これまでの同社の車種とは全く異なるプロポーションを持ちながらも、独自のフロントグリルにより一目でランチア車と分かる個性が備わっています。ボディスペックは全長3,985mm×全幅1,698mm×全高1,660mm、ホイールベース2,508mm、車両重量1,155~1,275kgで、ホイールベースはイディアと同一であり、ボディサイズも類似したものとなっています。
サスペンション形式は、2代目「イプシロン」などとも共通のフロント:マクファーソンストラット式/リア:トーションビーム式で、ブレーキも同じくフロント:ベンチレーテッド・ディスク式/リア:ドラム式を採用します。駆動方式はFFのみの設定で、エンジンは当初1.4L直4DOHC16Vガソリン、1.3L直4DOHCディーゼルターボ、1.9L直4SOHCディーゼルターボの3種類が用意されました。
上等な仕立てが特徴
最高出力/最大トルクはそれぞれ95ps/11.7kgm、70ps/18.4kgm、101ps/19.5kgmmで、トランスミッションは5速MTの他に、1.4Lガソリン車と1.3Lディーゼル車に「D.F.N」と呼ばれるシングルクラッチ式AMTが設定されました。一方、2列シート5人乗りの室内は、ボルトローナ・フラウ製のレザーインテリアを選択出来るなど、ミニバンらしからぬ上質な仕立てが特徴となっています。
又、「グランルーチェ」と呼ばれる大開口のガラス・スライディングルーフが備わり、開放感溢れる室内空間が演出されている点も特徴となります。そして2005年に、1.4L DOHC8Vエンジン(最高出力78ps/最大トルク11.7kgm)が、更に翌2006年には、1.3Lディーゼルターボエンジンのハイパフォーマンス版(最高出力95ps/最大トルク20.4kgm)がラインナップに加わりました。
次いで2007年にマイナーチェンジを受け、フェイスリフトやボディカラーに新色の追加、トランクスペースの拡大、オーディオシステムの機能拡大などが図られました。続いて2008年に1.9Lディーゼルターボが廃止され、代わって1.6L直4ディーゼルターボ(最高出力120ps/最大トルク30.6kgm)が設定されました。
そして2012年にイディアと共に生産を終了、後継モデルは発売されなかった為、現在のところランチア史上唯一のミニバン風コンパクトハッチとなっています。ムーザは欧州市場では大ヒット作になったものの、日本市場にはガレージ伊太利屋により左ハンドル仕様が少数輸入されたに留まっています。