ルノーは1962年6月、1956年にリリースした大衆車「ドーフィン」の実質的な後継モデルとなる「8(ユイット)」を発売しました。駆動方式は前年にリリースした「4」で採用したFFではなく、ドーフィン同様のRRが踏襲された一方、5ベアリングエンジンや当時はまだ少数派だった4輪ディスクブレーキの採用など、クラスを超えた先進的メカニズムが奢られた事が特徴でした。
ボクシーなスタイリング
ドーフィン同様4ドアセダンのみが用意されたボディは、曲線基調のドーフィンとは対照的なボクシーなスタイリングに変貌を遂げていました。ボディサイズは全長3,950mm×全幅1,450mm×全高1,405mmで、全長はドーフィンと同一となる一方、全幅は70mm、全高は35mm縮小されました。ホイールベースは同一の2,270mmで、車両重量は90kg増加し720kgとなっていました。
リアに搭載されるエンジンは、ドーフィンの845cc水冷直4OHVをベースに排気量を956ccまで拡大し、前述した5ベアリング化などの改良を施した新ユニットが搭載されました。最高出力は48hpで、ドーフィン標準モデル用ユニットから17hpの向上を果たしていました。組み合わせられるトランスミッションは4速MTで、最高速度125km/hの性能でした。
サスペンション形式は、フロントはダブルウィッシュボーン式を踏襲しながらも、スプリングがトーションバーからコイルに変更されました。一方リアは、スイングアクスル/コイル式からセミトレーリングアーム/トーションバー式に一新されました。そして1964年、1,108cc直4OHVエンジン(最高出力50hp)を搭載する上級グレード「マジョール」が追加されました。
高性能版の「ゴルディーニ」を追加
同時に、標準グレード/マジョール共に「フェルレック」と呼ばれる電磁クラッチ仕様が設定されました。次いで1965年、大型ヘッドランプや丸型5眼式メーターなど専用の内外装備わるボディに、マジョール用エンジンの最高出力を95hpまで高めて搭載、最高速度171km/hの性能を実現したスポーティモデル「ゴルディーニ」が追加されました。
更にこの年、8マジョールが廃止され、代わってボディを大型化した上級車種「10マジョール」がリリースされました。次いで1967年、ゴルディーニをベースにドライビングランプを追加し、1,255ccまで拡大したエンジンに5速MTを組み合わせて搭載する「ゴルディーニ1300」が発表されました。最高出力は103psまで高められ、最高速度は174km/hに達しました。
続いて翌1968年、標準モデルのエンジンが1,108cc(最高出力46hp)に置換されると共に、マジョールのグレード名が与えられました。更に1969年には、ゴルディーニと同様の内外装を持つボディに、チューニングを施した1,108ccエンジン(最高出力60hp)を搭載する「S」が追加されました。そして1970年にFF方式採用の後継モデル「12」がデビューした事を受け、1972年までに全モデルが生産終了となりました。