1906年に創業されたイギリスの高級スポーツカーメーカー、ラゴンダは、戦後アストンマーティン傘下となりました。そして1961年、新型高級4ドアセダン「ラピード」を発売しました。1958年にリリースされたアストンマーティンの高級グランツーリスモ「DB4」をベースとしながらも、新開発のエンジンやリアサスペンションが採用されたことが特徴でした。
独自のスタイリング
ボディ構造は鋼管チューブラフレームとアルミニウム製ボディパネルの組み合わせで、スタイリングはロングノーズ・スモールキャビンのプロポーションや控えめなテールフィン、つり目の異型4灯式ヘッドランプ、アルファロメオ製モデルを彷彿とさせる縦長のフロントグリルとその両サイドの横型のサブグリルなど、アストンマーティン製モデルとは全く異なる造形が備わっていました。
ボディ・ディメンションは全長4,966mm×全幅1,765mm×全高1,420mm、ホイールベース2,890mmで、DB4よりも二回りほど大きいディメンションでした。サスペンション形式は、フロントにダブルウィッシュボーン式が、リアにド・ディオン・アクスル式が採用されました。この形式は、のちに登場する「アストンマーティン・DB5」にも受け継がれました。
駆動方式はコンベンショナルなFRで、エンジンはオールアルミ製の4L直6DOHC3連キャブレター仕様(最高出力305ps)が搭載されました。このエンジンは、DB5にも採用されることとなりました。トランスミッションは、デビッド・ブラウン製の4速MTとB&W製の3速トルコン式ATが設定されたものの、ほとんどの個体が後者を装備して出荷されました。
先進的なブレーキを採用
また、ディスク式のブレーキにはサーボアシストや二系統システムが採用されるなど、先進的な設計を持っていました。一方インテリアは、レザー製のトリムやウォールナット素材のインパネ、ピクニックテーブルなどが備わるラグジュアリーな仕様となっていました。生産はハンドメイド方式で、受注生産形式での販売が行われました。
スタイリング面での評価が芳しくなかったことや、価格が4,950ポンドと極めて高価であったことから販売面では振るわず、1964年までの3年間に僅か55台が生産されたに留まりました。生産終了後、後継モデルはすぐにはリリースされず一旦ラピードの車名は途絶えたものの、1974年に「アストンマーティン・ラピード」として復活を遂げました。
また、2005年にコーチビルダーの手により、残存する個体をベースとして5ドア・シューティングブレークが製造されました。