かつてイギリスに存在していた自働車メーカー、ローバーは、1995年にMGブランドより新型2シーター・スポーツカー「MGF」をリリースしました。その2年前に発売された「RV8」が基本設計を1962年までさかのぼるFRスポーツカー「MGB」がベースであったのに対し、同ブランド初のミッドシップレイアウトを採用するなど全面的な新設計が行われていました。
先進的なサスペンションを採用
ボディタイプはRV8と同様、ソフトトップが備わる2ドア・コンバーチブルのみの設定でした。スタイリングは曲線基調の流麗なフォルムが特徴で、RV8よりも遥かにモダンな雰囲気を醸すものとなっていました。ボディサイズは全長3,914mm×全幅1,630mm×全高1,260mmで、RV8よりも一回り小さく、ホイールベースはそれよりも若干長い2,375mmに設定されていました。
車両重量は1,087kgで、RV8よりも200kgほど軽量に抑えられていました。サスペンション形式は、ガスと液体を使用した前後関連懸架システム「ハイドラガスユニット」採用の4輪ダブルウィッシュボーン式で、リアにリーフ・リジッド式を採用するなど旧態依然としていたRV8から大幅なリファインが図られていました。
ミッドに搭載されるエンジンは、当初は1.8L直4DOHC(最高出力120ps/最大トルク16.8kgm)のみの設定でした。トランスミッションは5速MTが組み合わせられ、最高速度198km/h・0-60mph加速8.7sの性能を発揮しました。ステアリング形式はパワーアシスト付のラック&ピニオン式で、ブレーキはフロントがベンチレーテッド型の4輪ディスク式が採用されました。
高性能版や廉価版を追加
グレードは「1.8i」のモノグレード設定で、安全装備面では運転席SRSエアバッグが標準で備わり、助手席SRSエアバッグとABSはオプション扱いでした。そして翌1996年、1.8L直4DOHC可変バルブタイミング仕様エンジン(最高出力144ps/最大トルク17.7kgm)を搭載し、助手席SRSエアバッグを標準化した「1.8i VVC」が追加されました。
パフォーマンスは最高速度が5km/hアップの203km/hとなり、0-60mph加速タイムは1.1s短縮され7.6sとなっていました。次いで2000年にマイナーチェンジが実施されると同時に、1.6L直4エンジン(最高出力112ps)搭載の廉価版「1.6」と、1.8L可変バルブタイミング仕様エンジンのチューンナップ版(最高出力159ps)を搭載する高性能版「トロフィー160」が追加されました。
同時に、トランスミッションの選択肢にCVTが加えられました。そして2002年、ビッグマイナーチェンジ版の「MG TF」にバトンタッチして生産終了となりました。MGFは、日本市場でも1995年12月から正規輸入販売が行われました。その後、翌1996年5月に1.8i VVCが追加されたものの、1.6やトロフィー160のインポートは見送られました。