BMWは1986年初め、ハイパフォーマンスモデル「M」シリーズのボトムレンジを受け持つニューモデル、「M3」を発売しました。1982年にリリースされた小型乗用車、2代目「3シリーズ」をベースとしながらも、ボディパネルの大半をリメイクするとともに専用エンジンを搭載するなど、事実上別モデルといえるほどの差別化が図られていました。
空力特性が向上
ボディタイプは、3シリーズに用意された各ボディの中から2ドアセダンがチョイスされました。スタイリングは、3シリーズ譲りのスクエアなフォルムを踏襲しながらも、張り出した前後のブリスターフェンダーや傾斜の強められたCピラーおよびリアウィンドウ、ハイデッキ化されたトランクフード、前後のスポイラーやサイドスカートが備わるなど、大幅なモディファイが施されました。
その結果、Cd値は3シリーズを0.05ポイント下回る0.33を実現しました。ボディ・ディメンション全長4,345mm×全幅1,680mm×全高1,370mm、ホイールベース2,565mmで、3シリーズから全幅が35mmワイド化されていました。サスペンションは、3シリーズ同様のフロント:ストラット式/リア:セミトレーリングアーム式の形式を踏襲しながら、スプリングレートが高められた専用品が採用されました。
駆動方式はFRを踏襲し、エンジンは2.3L直4DOHC16バルブNAが搭載されました。触媒の有無などにより、最高出力195ps/200ps/215psの3種類の仕様が存在しました。最も強力な215ps仕様の場合、5速MTとの組み合わせによるパフォーマンスは最高速度241km/h・0-100km/h加速6.7sを誇りました。ブレーキはフロントがベンチレーテッド型の4輪ディスク式で、タイヤは205/55ZR15が装着されました。
カブリオレや進化版を追加
また、室内は乗車定員が3シリーズから1名減らされ4人乗りとされたほか、専用バケットシートや専用ステアリングなどが採用されました。その後1988年に、電動ソフトトップが備わる4シーター・オープンモデル「カブリオレ」が追加されました。さらに1990年には、排気量を2.5Lに拡大するとともに、16インチタイヤやレカロ・シートなどを採用した進化版「スポーツ・エボリューション」がリリースされました。
最高出力は238psに向上、そのパフォーマンスも最高速度248km/h・0-100km/h加速6.5sまで向上を果たしていました。そしてこの年、ベースモデルの3シリーズにフルモデルチェンジが施されると同時に、M3は生産終了となりました。新型3シリーズをベースとした2代目M3が登場するのは、それから2年後の1992年のことでした。
初代M3は、日本市場においてはセダン・左ハンドル仕様のみが導入されました。エンジンは触媒付で、最高出力195ps/6,750rpm・最大トルク23.4kgm/4,750rpmのスペックでした。