BMWにより1998年に設立された新生ロールス・ロイス「ロールス・ロイス・モーター・カーズ」は、2003年に同ブランド初のモデルとなるショーファードリブン「ファントム」を発売しました。ファントムの名を名乗るモデルは、旧ロールス・ロイス社時代の1968年に発売され1991年に生産終了となった「ファントムⅥ」以来12年ぶりのことでした。
まずは4ドアセダンから
ボディタイプは、当初は5人乗りの4ドアセダンのみの設定で、4枚のドアはロールス・ロイス・ブランドのモデルとして久々の観音開き式「コーチドア」が採用されました。エクステリア・デザインは、直線基調のスクエアなフォルムや後席の乗員が隠れる太いCピラー、威厳溢れる大型のフロントグリルなどが特徴でした。
かつてのファントムⅥとの比較では、はるかにモダンなイメージに変貌していました。また、空力特性向上にも注力され、Cd値は0.383を実現していました。ボディ・ディメンションは全長5,834mm×全幅1,990mm×全高1,632mm、ホイールベース3,570mmで、ファントムⅥよりは一回り小さくなったものの、同世代に比類するもののない堂々たる体躯でした。
BMW製V12エンジンを搭載
車両重量は2,485kgで、モノコックボディの採用などによりファントムⅥから200kg以上もの軽量化を実現していました。駆動方式はロールス・ロイス伝統といえるFRを踏襲し、エンジンはBMW製の6,750cc V型12気筒DOHC24バルブ仕様が搭載されました。かつてと異なり、最高出力460ps/5,350rpm・最大トルク73.4kgm/3,500rpmというスペックが公表されました。
トランスミッションは当初6速トルコン式ATが組み合わせられ、最高速度240km/h・0-100km/h加速5.9sという第一級のパフォーマンスを発揮しました。サスペンション形式はフロント:ダブルウィッシュボーン式/リア:マルチリンク式で、ダンパーは電子制御エアー式が採用されました。リアに古典的なリジッド・リーフ式を採用していたファントムⅥからは、長足の進歩をとげていました。
ボディ・バリエーションを拡充
その後2005年に、全長とホイールベースを250mm延長した「EWB(エクステンディッドホイールベース)」が追加されました。車両重量は2,670kgまで増加したものの240km/hの最高速度に変わりはなく、0-100km/h加速も0.1sの低下に留まりました。次いで2007年には、2ドア・4シーター仕様ソフトトップ・コンバーチブルの「ドロップヘッドクーペ」が追加されました。
ボディ・ディメンションは全長5,609mm×全幅1,987mm×全高1,581mm、ホイールベース3,320mmとセダンよりも一回り小さく、車両重量はそれよりも重い2,620kgでした。さらに翌2008年には、そのフィクスドヘッド版といえる「クーペ」がリリースされました。ドロップヘッドクーペから全高が11mm高くなった一方、車両重量は30kg軽くなっていました。
次いで2012年のマイナーチェンジによりシリーズⅡに移行、内外装デザインが一部変更されるとともに、8速ATの採用により燃費・環境性能が向上しました。そして2017年1月をもって生産終了となりました。