1955年に発表されたサーブ・オートモビルの大衆車「93」は、1960年のフルモデルチェンジにより「96」に移行しました。基本設計やスタイリングなどは概ね93譲りで新鮮味には欠けたものの、4ストロークエンジンの追加などさまざまな改良を加えながら生産期間20年におよぶロングセラーモデルとなりました。
リアまわりの意匠を変更
ボディタイプは93同様、2ドアセダンのみの設定でした。エクステリア・デザインは丸みを帯びた流麗なフォルムが踏襲された一方で、リアウィンドウおよびリアクォーターウィンドウが拡大されるとともにテールランプが大型化されるなど、リアまわりの意匠が大きく変更されました。また、室内はリアシートの居住性が改善されるとともに、乗車定員がそれまでの4名から5名に増やされました。
ボディ・ディメンションは全長4,050mm×全幅1,570mm×全高1,473mm、ホイールベース2,488mmで、93から全長と全高が拡大されていました。駆動方式は縦置きFF方式が踏襲され、エンジンは当初前年に発売されたステーションワゴン「95」と共通の水冷2ストローク841cc直列3気筒シングルキャブレター仕様(最高出力38hp/4,250rpm・最大トルク8.3kgm/3,000rpm)が搭載されました。
安全性強化を実施
トランスミッションは当初、それまでと同様ローがノンシンクロの3速MTが組み合わせられました。サスペンション形式はフロント:ダブルウィッシュボーン/コイル式・リア:ビームアクスル/コイル式で、ブレーキは当初は従来同様4輪ドラム式が装備されました。その後1961年に2系統ブレーキ・システムや前席2点式シートベルトが採用され、安全性が向上しました。
次いで翌1962年には、輸出仕様車にフルシンクロの4速MTが採用されました。さらに1964年、圧縮比アップなどにより最高出力が40hpに向上するとともに、国内仕様車にも4速MTが設定されました。また、メーターパネルのデザインが一新されたことも変更点のひとつでした。続いて1965年には、トリプルキャブレター化により最高出力が42hpに向上しました。
4ストロークエンジンを追加
次いで1967年、フォード製の1.5L V4OHVエンジン(最高出力65hp/4,600rpm・最大トルク11.7kgm/2,500rpm)+フロント・ディスクブレーキ搭載モデルが追加されました。追って1968年には2度目のフェイスリフトが実施され、ヘッドランプがそれまでの丸型から角型に変更されるとともに、フロントとリアのウィンドウが拡大されました。また、この年に2ストロークエンジンは廃止されました。
その後、フェイスリフトやウレタンバンパーの採用などの仕様変更が行われたのち、1980年をもって生産終了となりました。総生産台数は、それまでのどのサーブ車よりもはるかに多い547,221台に及びました。