かつてサーブの自動車部門として存在したサーブ・オートモビルは、1970年にそれまでの「ソネットV4」に代わる新型2シーター・スポーツカー「ソネットⅢ」を発売しました。シャシーやパワートレインなどは従来からのキャリオーバーであったものの、スタイリングが一新されるとともに機構面・装備面でも改良が施されました。
リトラクタブルヘッドランプを採用
下回りはスチール製のボックス型フレームが踏襲された一方、ボディタイプは2ドアクーペからガラスハッチが備わる3ドアクーペに変更されました。また、イタリア人デザイナーのセルジオ・コッジオーラが担当したエクステリアは、フロントまわりとリアまわりの造形が従来から大幅に変更されていました。
フロントまわりは、固定式ヘッドランプに代わり手動操作によるリトラクタブルヘッドランプが採用されたほか、ラジエーターグリルやバンパーなどの意匠も一新されました。さらに、それまでのノッチバックからファストバックに変更されたことも手伝い、はるかにスタイリッシュな雰囲気に変貌をとげました。
同時に空力特性向上にも注力され、Cd値0.31を実現したことも特徴でした。ボディサイズは全長3,900mm×全幅1,500mm×全高1,190mmで、ソネットV4から一回り拡大されました。また、ホイールベースは2,133mm、車両重量は710kgでした。駆動方式はFFを踏襲し、エンジンも当初フォード製の水冷4ストローク1.5L V4OHVシングルキャブレター仕様がキャリオーバーされました。
サーブ ソネットⅢの動画
ソネットV4から最高速度が向上
国内仕様のスペックは最高出力65hp/4,700rpm・最大トルク12kgm/2,500rpmで、従来から変更はありませんでした。一方でアメリカ向け輸出モデルは、排出ガス規制への対応のため最高出力が55hpにドロップしていました。トランスミッションは従来同様の4速MTが組み合わせられ、本国仕様の最高速度はソネットV4を5km/h上回る165km/hに達しました。
また、サスペンション形式はフロントがウィッシュボーン/コイル式、リアがU字型ビーム・アクスル/コイル式でした。グレード体系は、スタンダードと本革シートやアルミホイールが装備されるラグジュアリー仕様の2種類が用意されました。その後1971年に、フェイスリフトとともにエンジンがフォード製の1.7L V4OHV(最高出力65hp)に置換されました。
そして1974年をもって生産を終了、後継モデルのリリースはなく、現時点において同社のピュアスポーツカーとして最後のモデルとなっています。総生産台数は、それまでのソネット・シリーズよりもはるかに多い10,236台でした。