かつてサーブの自動車部門として存在したサーブ・オートモビルは、1978年に「99」を発展させた新型乗用車「900」を発売しました。基本設計は99譲りでメカニズム面での大きな変更はなかったものの、主要なマーケットであったアメリカの安全基準に対応するためボディが延長されました。商業的に成功をおさめ、15年に渡り生産が続けられるロングセラーとなりました。
4種類のエンジンでスタート
ボディタイプは、当初ファストバックの3ドアハッチバックと5ドアハッチバックの2タイプのラインナップでした。スタイリングは、垂直に近い角度のAピラーや側面までまわり込んだフロントウィンドウなど99の特徴を継承しながらも、バンパーやランプ類の意匠などディテール面ではモダナイズが図られていました。
ボディサイズは全長4,680~4,685mm×全幅1,690~1,695mm×全高1,405~1,425mmで、99から全長と全幅が拡大された一方、全高は若干低められました。また、ホイールベースは50mm近く延長され2,517mmとなりました。駆動方式は96同様の縦置きFF方式が踏襲され、エンジンも自社製の2L直4SOHCがキャリオーバーされました。
ラインナップは、シングルキャブレター仕様(最高出力99hp)とツインキャブレター仕様(最高出力106hpおよび115hp)のNAと、ターボ(最高出力143hp)の4種類でした。トランスミッションは、当初4速MTまたは3速トルコン式ATが組み合わせられました。サスペンションは、フロント:ダブルウィッシュボーン式/リア:5リンク・リジッド式を踏襲しながら改良が施されました。
また、ブレーキは従来同様に4輪ディスク式が採用されました。一方、室内はインパネが一新され、ドライバーを囲むようなデザインが採用されました。グレード体系は、当初下から「GL」「GLS」「EMS」「GLE」「ターボ」の5タイプがラインナップされました。その後1980年にフェイスリフトが実施されると同時に、EMS/ターボに5速MTが設定されました。
ノッチバックのセダンを追加
追って1980年の秋には、パワーウィンドウやリモコン・ドアミラーなどが設定されたほか、ノッチバックの4ドアセダンがラインナップに加えられました。次いで1983年に2度目のフェイスリフトが実施され、フロントグリルやバンパーなどの意匠が変更されたほか、エンジンに改良が施されました。また、2ドアセダンと同社初の2ドアカブリオレが追加されたのもこの年のことでした。
さらに翌1984年には、2L直4DOHC16バルブ・ターボエンジン(最高出力173hp)を搭載する「ターボ16V S」が追加されました。次いで1986年に3度目のフェイスリフトが実施され、スラントノーズの採用などフロントまわりの意匠が一新されました。続いて1989年には、エンジンが全車DOHC16バルブ仕様にアップデートされるとともに、ターボモデルにABSが装備されました。
そして1993年のフルモデルチェンジでカブリオレをのぞき2代目モデルに移行、カブリオレも1年後の1994年に2代目に切り替えられました。