かつてサーブの自動車部門として存在したサーブ・オートモビルは、1966年に同社のスポーツカー第2弾となる「ソネットⅡ」をリリースしたのち、翌1967年にエンジンをそれまでの2ストロークから4ストロークに置換したアップグレード版「ソネットV4」を発売しました。性能面では、ソネットⅡから最高速度の向上を果たしていました。
フレームを強化
下回りはスチール製のボックス型フレームを踏襲しながらも、エンジン置換に伴うフロント荷重増加に対応するため強化が図られていました。また、FRP製を踏襲するボディは引き続きフィクスドヘッドの2ドアクーペのみの設定で、エクステリア・デザインも基本的にはソネットⅡと共通でした。
しかしながら、大型化したエンジンを収めるため、ボンネットフードのやや右寄りにパワーバルジが設けられたことが相違点となっていました。ボディ・ディメンションは全長3,770mm×全幅1,440mm×全高1,110mm、ホイールベース2,160mmで、ソネットⅡから変更はありませんでした。一方、車両重量は65kg増加し775kgとなっていました。
サーブ ソネットV4の動画
フリーホイール機構を踏襲
駆動方式はFFを踏襲し、エンジンはそれまでの自社製水冷2ストローク841cc直列3気筒に代わり、フォード製の水冷4ストローク1,498ccV型4気筒が搭載されました。9:1の圧縮比と1基のソレックス・キャブレターにより発生するアウトプットは最高出力65hp/4,700rpm・最大トルク11.7kgm/2,500rpmで、ソネットⅡから5hp/2.2kgmの向上を果たしたほか、発生回転数が下げられていました。
従来同様の4速MTとの組み合わせによるパフォーマンスは、最高速度160km/h・0-100km/h加速12.5sでした。ソネットⅡとの比較では最高速度が10km/h向上した一方、0-100km/h加速タイムは同等に留まりました。また、4ストローク化にも関わらず、引き続きアクセル・オフ時のエンジンの焼き付きを防ぐ「フリーホイール機構」が採用されました。
サスペンション形式は、それまでと同様のフロント:ウィッシュボーン/コイル式・リア:ビーム・アクスル/コイル式が踏襲されました。また、ラック&ピニオン式のステアリング形式や、155SR15サイズのラジアルタイヤにも変更はありませんでした。一方室内は、インパネの意匠と仕上げが変更されました。
その後1969年に、シートの造形変更とともにステアリングホイールがパッド付となる仕様変更を受けたものの、この年をもって生産は打ち切られました。そして翌1970年に、後継モデルの「ソネットⅢ」がリリースされました。2年間の販売期間における総生産台数は、1,469台でした。