1996年に初代モデル(986型)がデビューしたポルシェAGのオープン2シータースポーツカー「ボクスター」は、2004年に8年ぶりにして初のフルモデルチェンジを受け、2代目987型に移行しました。先代からのキープコンセプトで、ミッドシップレイアウトのプラットフォームや基本メカニズムに変更はなかったものの、ボディ剛性やサスペンション、パワートレインの強化など総合的な性能向上が図られました。
空力特性が向上
先代同様電動ソフトトップが備わるボディは、基本的にそれまでのイメージが踏襲されたものの、ランプ類の意匠は一新されました。また、空力特性は先代を0.02ポイント下回る0.29を実現しました。ボディサイズは全長4,329mm×全幅1,801mm×全高1,295mmで、すべての項目において先代からわずかに拡大されました。一方、2,415mmのホイールベースに変更はありませんでした。
サスペンションは、4輪マクファーソンストラット式の形式が踏襲された一方、新たに「PASM」と呼ばれる電子制御可変ダンピングシステムがオプション設定されました。エンジンは先代からのキャリオーバーで、当初標準モデル「ボクスター」には2.7L水平対向6気筒DOHC NAが、高性能版「ボクスターS」には3.2L水平対向6気筒DOHC NAが搭載されました。
ただしアウトプットは先代から向上しており、ボクスターが最高出力240ps/6,400rpm・最大トルク27.5kgm/4,700~6,000rpm、、ボクスターSが最高出力280ps/6,200rpm・最大トルク32.6kgm/4,700~6,000rpmとなっていました。組み合わせられるトランスミッションは、ボクスターが5速MTまたは5速トルコン式AT「ティプトロニック」、ボクスターSが6速MTまたはティプトロニックでした。
MT仕様を選んだ場合のパフォーマンスは、ボクスターが最高速度256km/h・0-100km/h加速6.2s、ボクスターSが最高速度268km/h・0-100km/h加速5.5sでした。また、ブレーキは先代同様の4輪ベンチレーテッド・ディスク式を踏襲、タイヤサイズはボクスター/ボクスターSともにインチアップされ前者が17インチ、後者が18インチとなりました。
仕様変更にともない排気量を拡大
その後2006年の仕様変更で、ボクスター用2.7Lエンジンのアウトプットが最高出力245ps/6,500rpm・最大トルク27.8kgm/4,600~6,000rpmに向上するとともに、ボクスターSに登載されるエンジンが「ケイマンS」と同じ3.4Lとなり、アウトプットが最高出力295ps/6,250rpm・最大トルク34.7kgm/4,400~6,000rpmまで向上しました。
同時に、オプションで走行性能を向上させる「スポーツクロノパッケージ」が設定されました。次いで2007年、3.4Lエンジンのアウトプットを最高出力303ps/6,250rpm・最大トルク34.7kgm/4,400~6,000rpmまで高めて搭載し、エクステリアや装備面で差別化を図った全世界1960台限定モデル「ボクスターRS60スパイダー」がリリースされました。
トランスミッションは6速MTまたは5速ティプトロニックで、前者を選択した場合は最高速度274km/h・0-100km/h加速5.4sのパフォーマンスを発揮しました。続いて2008年にフェイスリフトが実施されるとともに、ボクスターのエンジンが2.9Lに拡大されアウトプットが最高出力255ps/6,400rpm・最大トルク27.8kgm/4,400~6,000rpmとなりました。
デュアルクラッチ式トランスミッションを設定
一方、ボクスターSは排気量こそ従来から変更はなかったものの、アウトプットが最高出力310ps/6,250rpm・最大トルク36.7kgm/4,400~5,500rpmまで向上しました。また、ATがそれまでのティプトロニックからデュアルクラッチ式の7速PDKに変更されたこともトピックのひとつでした。
さらに翌2009年には、専用デザインのソフトトップやリアまわりの造形を持つボディに、3.4Lエンジンのアウトプットを最高出力320ps/7,200rpm・最大トルク37.7kgm/4,750rpmまで高めて搭載する「ボクスタースパイダー」がリリースされました。そして2012年にフルモデルチェンジが実施され、現行981型に移行しました。
先代モデル:初代ボクスター