三菱自動車の2ドアクーペ「FTO」は、1994年10月、フラッグシップスポーツカー「GTO」の弟分的なモデルとして発売されました。FTOの車名が付く車種がラインナップされるのは、1975年に生産終了となった「ギャランクーペFTO」以来19年ぶりの事でした。しかし、コンセプトやメカニズムなどに共通要素はなく、より本格的なスポーツモデルとしての性格を備えていました。
小型軽量なボディに3種類のエンジン
スタイリングは曲線を基調とした流麗かつアグレッシブなプロポーションを持つ他、リアスポイラーを備えるなど、GTOとある程度類似性のあるものでした。ボディサイズは全長4,365mm×全幅1,735mm×全高1,300mmで、全高を除けばGTOよりも一回り小さい一方で、ホイールベースはそれよりも長い2,500mmでした。車両重量は1,100kg~1,190kgと軽量で、GTOの2/3程に過ぎませんでした。
サスペンション形式は前:マクファーソンストラット式/後:マルチリンク式で、ブレーキは前がベンチレーテッド型の4輪ディスク式でした。駆動方式は4WDのGTOと異なりFFで、エンジンは1.8L直4SOHCの4G93型と、2L V6 DOHCの6A12型のMIVEC(可変バルブタイミング)無しとMIVEC付きの3種類が用意されました。トランスミッションは、それぞれに5速MTとマニュアルモード付4速トルコン式ATが設定されました。
グレード体系及び搭載エンジンのスペックは、1.8Lの「GS」が最高出力125ps/6,000rpm、最大トルク16.5kgm/4,500rpm、2L MIVEC無しの「GR」が170ps/7,000rpm、19kgm/4,000rpm、同MIVEC付きの「GPX」が200ps/7,500rpm、20.4kgm/6,000rpmでした。インテリアは、曲線的なデザインのインパネに6連メーターが並ぶスポーティな雰囲気に溢れるものでした。
三菱 FTOのCM
改良により装備を充実し、新グレードを設定
そして1996年2月、全車に運転席SRSエアバッグシステムを標準装備すると同時に、「GP」をベースにスポーツサスペンションやヘリカル式LSD、前後ストラットタワーバーなどを装備した新グレード「GPバージョンR」が追加されました。次いで1997年2月にマイナーチェンジを実施し、外装の変更と共に全車にABSが標準装備され、「GS」「GR」以外のATが5速化されました。
又、2L MIVEC無しエンジンのスペックが最高出力180ps/7,000rpm、最大トルク19.5kgm/4,000rpmに向上した他、同エンジン搭載の新グレード「GXスポーツパッケージ」が追加されました。次いで同年11月、「GXスポーツパッケージ」及び「GPバージョンR」に、サイドエアダムや大型リアスポイラー、フォグランプなどが備わる「エアロシリーズ」が追加されました。
FTOは、FFのベストハンドリングカーと評されるなど専門家から高く評価され、デビュー年に日本カーオブザイヤーを受賞しました。販売面では、発売から翌1995年まではこの種のモデルとしては大変好調であったものの、その後急速に人気が落ち込みました。そして2000年7月、新側面衝突安全基準の施行を前にして、GTOと共に生産を終了しました。