マセラティの2ドアクーペ「メラク」は、1971年に発売されたスーパーカー「ボーラ」に次ぐミッドシップスポーツ第2弾としてシトロエンと共同開発され、翌1972年に発売されました。プラットフォームやボディの多くのパーツをボーラと共用しながら、エクステリアの一部が異なる他、エンジンも異なるものが搭載されました。性能ではボーラに一歩を譲ったものの、それを上回るヒット作となりました。
ボーラのボディをノッチバックに変更
ボディのデザインを手掛けたのはボーラと同様ジョルジュエット・ジウジアーロで、ショートノーズ・ロングデッキのプロポーションやリトラクタブルヘッドランプなど、多くの部分はボーラと共通でした。しかし、ボディ後部がエンジンの排熱性を改善する為ファーストバックからノッチバックに変更されると共に、側面から見た際にファーストバック風に見えるよう梁が渡された独自のデザインが採用されました。
ボディサイズは全長4,335mm×全幅1,768mm×全高1,149mmで、全高の僅かな相違を除けばボーラと同一で、ホイールベースも同一の2,600mmでした。一方、ボーラと異なりミニマムなスペースながら後席が備わり、2+2仕様になりました。車両重量は、ボーラから160kg程軽量化された1,387kgでした。サスペンションは4輪ダブルウィシュボーン式による4輪独立懸架を踏襲し、ブレーキもシトロエン製の4輪ディスク式が踏襲されました。
シトロエン向けの3L V6エンジン搭載でスタート
搭載されたエンジンは、マセラティが「シトロエン・SM」用に供給していた3L V6DOHCウェーバー3連キャブレター仕様で、最高出力193ps/6,000rpm・最大トルク26kgm/4,000rpmのスペックはボーラの4.7L V8エンジンより遥かに控えめなものでした。5速MTとの組み合わせによる動力性能は、最高速度225km/h、0-100km/h加速8s、0-400m加速15.5sで、ボーラよりは劣ったものの3Lクラスとしては十分なパフォーマンスでした。
そして1975年、ハイパフォーマンス版の「メラクSS」が発売されました。3L V6エンジンを圧縮比アップなどによりチューンナップした事で、最高出力211ps/5,800rpm・最大トルク26kgm/5,000rpmのスペックとなり、最高速度が250km/hに向上しました。次いで1976年に、イタリアの税制上有利となる2Lエンジンを搭載する「メラク2000GT」が発売されました。
V6DOHCウェーバー3連キャブレター仕様ユニットが発生するスペックは、最高出力170ps/7,000rpm・最大トルク19kgm/5,000rpmと3Lモデルより低下した一方、車両重量が1,160kgへと大幅に軽量化された事が功を奏し、3Lモデルに遜色ない最高速度220km/h、0-100km/h加速7.3sの性能を発揮しました。メラクの生産期間はボーラの7年に対し12年と長く、1982年に生産終了となるまでの総生産台数は3倍以上の1,830台でした。