1964年にデビューしたポルシェのスポーツカー「911」は、1974年及び1977年に初期型の「901型」から「930型」に切り替えられた後、1989年に3代目となる「964型」にモデルチェンジされました。サスペンション形式が一新され操縦安定性が改善されると共に排気量が更に拡大された他、ポルシェ史上初となるフルタイム4WDモデルが設定された事が特徴でした。
ボディを新設計しNA 4WDモデルから発売
キープコンセプトのモデルチェンジによりスタイリングは930型のイメージを色濃く受け継ぐものの、ボディはパーツの8割が新造された別物でした。ボディのバリエーションは930型同様「クーペ」「タルガ」「カブリオレ」の3種類が用意され、ボディサイズは全長4,250mm×全幅1,651mm×全高1,320mmで、全幅と全高は930型のNAモデルと同一で全長のみ40mmm短くなりました。
ホイールベースは930型と大差ない2,272mmで、車両重量は最初に発売された4WDモデル「911カレラ4」クーペの場合で1,450kgとなり、従来から大幅に増加しました。これまで通りリアに搭載される空冷SOHCフラット6は、当初はNAのみが用意され、排気量が930型の3.2Lから3.6Lまで拡大されました。スペックは、930型「911カレラ」よりも19ps/2.6kgm向上した最高出力250ps/6,100rpm・最大トルク31.6kgm/4,800rpmでした。
トランスミッションは5速MTが組み合わせられ、最高速度は14km/h高い260km/hに向上しました。それと同時に前述の通りサスペンションが刷新され、フロントがマクファーソンストラット式を踏襲しつつスプリングがトーションバーからコイルに、リアはトレーリングアーム+トーションバーからセミトレーリングアーム+コイルスに変更されました。
そして翌1990年に、2WD版の「911カレラ2」が追加されました。車両重量が4WD版よりも100kg軽い1,350kgとなり、最高速度は同一であったものの、0-100km/h加速は0.5s短縮され5.7sとなりました。同時に、マニュアルモード付トルコン式4速AT「ティプトロニック」が設定されました。ティプトロニック仕様の性能は、MT仕様に対し最高速度が4km/h低下し、0-100km/h加速が0.9s遅いものでした。
遅れてターボモデルもモデルチェンジ
翌1991年に、930型のまま販売が継続されていた「911ターボ」が964型モデルチェンジして発売されました。エンジンは930型「911ターボSE」に搭載されていた物と基本的に同一の3.3Lインタークーラーターボ仕様で、スペックは若干低下し最高出力320ps/5,750rpm・最大トルク45.9kgm/4,500rpmとなり、動力性能も僅かに劣る最高速度270km/h、0-100km/h加速5.4sでした。
全幅は930型の時と同様NAモデルよりワイド化されたものの、930時代より若干狭い1,753mmでした。次いで1992年に、NAモデルに高性能な「911カレラRS」が追加されました。ボディの軽量化や装備の簡略化により車両重量が1,220kgに軽量化されると共に、エンジンもチューニングが施され最高出力260ps/6,100rpm・最大トルク33.1kgm/4,800rpmに向上、0-100km/h加速が5.3sに短縮されました。
モデル末期に相次いで高性能モデルを追加
更に同年、カレラRSのエンジンを3.8Lまで拡大した「911カレラRS3.8」が発売されました。最高出力300ps/6,500rpm・最大トルク36.7kgm/5,250rpmのスペックで、最高速度270km/h、0-100km/h加速4.9sの性能でした。次いで1993年に、ターボモデルの高性能版として「911ターボ3.6」が追加されました。最高出力360ps/5,550rpm・最大トルク53kgm/4,200rpmのスペックを持ち、最高速度280km/h、0-100km/h加速4.8sの性能を発揮しました。
そして同年、後継モデルの993型にバトンタッチして、964型は生産終了となりました。