フェラーリは1996年に、「F512M」の後を継ぐスーパースポーツ「550マラネロ」を発表しました。1973年に「365GTB/4」から「365GT4/BB」にバトンタッチされて以来、同社が2シーターV12モデルに採用し続けてきたMR方式を止め、23年ぶりにFR方式を復活させた事が最大の特徴でした。同時に、性能面においてもF512Mを凌ぐ第一級のものでした。
ヘッドランプは固定式に
ボディタイプは、発売当初は2ドア・2シーターのフィクスドヘッド・クーペのみの設定で、デザインは引き続きピニンファリーナの手により行われました。F512Mに対するスタイリング面での特徴は、エンジンレイアウトの変更に伴いロングノーズ・ショートデッキのプロポーションとなった他、ヘッドランプがそれまでのリトラクタブル式から固定式に変更された事でした。
空力特性の追求にも抜かりはなく、F512Mと同一のCd値0.33を実現していました。ボディサイズは全長4,550mm×全幅1,935mm×全高1,277mmで、F512Mよりも全長が長く全幅は狭く、そして全高が高いディメンションに変化しました。ホイールベースは50mm短い2,500mmで、車両重量は200kg以上重い1,690kgとなっていました。
456用のエンジンをリファインして搭載
フロントに搭載されるエンジンは、F512Mの4.9L 180度V12DOHCから、1993年に発売された2+2GT「456」と共通の5.5L 65度V12DOHCに変更されました。同時に、456に引き続きトランスアクスルレイアウトが採用されました。又、10.6:1の圧縮比やボッシュ・モトロニックによる燃料供給は456と共通ながら、鋳造ピストンやチタンコンロッドなどF50譲りのテクノロジーが投入された事が特徴でした。
アウトプットは456を最高出力で42HP、最大トルクで1.9kgm上回る485HP/7,000rpm・57.9kgm/5,000rpmで、F512Mに対しても45HP/6.9kgm上回るものでした。トランスミッションは6速MTが組み合わせられ、最高速度はF512Mより5km/h高い320km/h、0-60mph加速は0.2s短縮された4.6sのパフォーマスを発揮しました。
限定モデル「バルケッタ」を追加
サスペンション形式はフェラーリ伝統の4輪ダブルウィッシュボーン式が踏襲されると共に、電子制御可変ダンパーが採用されました。ステアリング形式は、従来同様のラック&ピニオン式が踏襲されました。そして2000年に開催されたパリ・サロンにおいて、448台限定のオープンモデル「550バルケッタ」がデビューしました。
エクステリアはピニンファリーナ自身の手によりリデザインが施された他、インテリアにも一部変更が加えられました。ボディスペックは、フロントウィンドウ上端部がカットされた事などでマラネロから全高が19mm低くされた他は、車両重量も含めマラネロと同一でした。エンジンのスペックにも変更はなかったものの、最高速度は300km/hに低下しました。
550マラネロの生産は2001年まで継続され、翌2002年に後継モデル「575Mマラネロ」がデビューしました。