1964年にデビューしたポルシェのスポーツカー「911」は、基本的なメカニズムやスタイリングのイメージを受け継ぎながらモデルチェンジを繰り返し代を重ね、1993年に発売された「993型」で4代目となりました。3代目「964型」以前のモデルとは外観のイメージがかなり異なる他、リアサスペンションの形式が一新されRR車特有の操縦安定性の癖が軽減された事が特徴でした。
ボディはイメージチェンジと共にワイド&ローに
スタイリングは、全体的なシルエットは初代「901型」以来の雰囲気を残すものの、直立していたヘッドランプが寝かされると共にフロントフェンダーの峰も低くされた為、フロント廻りのイメージが大きく変わりました。ボディのバリエーションは964型同様に「クーペ」「タルガ」「カブリオレ」の3種類が用意され、タルガは従来のデチャッタブルトップから電動スライディンググラストップに変更されました。
ボディサイズは、NAモデルが全長4,245mm×全幅1,735mm×全高1,300mm、ターボモデルが全長4,245mm×全幅1,795mm×全高1,285mmで、共に964型よりもワイド&ローなディメンションになると共に、全車が日本における3ナンバー車となりました。ホイールベースは2,272mmで変更はなく、車両重量はやや重くなり1,270kg~1,500kgとなりました。
エンジンは全車で性能が向上
リアに搭載される空冷SOHCフラット6は、「カレラ」と日本仕様を除く「カレラ4」が3.6L NA(最高出力272ps/6,100rpm・最大トルク33.7kgm/5,000rpm)、「カレラRS」と日本仕様「カレラ4」が3.8L NA(最高出力300ps/6,500rpm・最大トルク36.2kgm/5,400rpm)、「ターボ」が3.6Lターボ(最高出力408ps/5,750rpm・最大トルク55.1kgm/4,500rpm)で、何れも964時代から性能向上を果たしました。
トランスミッションは全車に6速化されたMTが設定される他、カレラRS以外に4速トルコン式AT「ティプトロニックS」が設定されました。駆動方式は、カレラ及びカレラRSが2WD、カレラ4とターボがフルタイム4WDで、ターボと4WDの組み合わせは初となりました。動力性能は、カレラ・クーペが最高速度267km/h・0-100km/h加速5.3s、ターボが最高速度290km/h・0-100km/h加速4.3sとなるなど、全車964型よりも向上しました。
サスペンション形式は、フロントのマクファーソンストラット/コイル式を964型から踏襲する一方、リアはセミトレーリングアーム/コイル式からマルチリンク/コイル式に変更され、操縦安定性と乗り心地が向上しました。そして1996年に、ターボ用のワイドボディやブレーキなどのパーツと3.6L NAエンジンを組み合わせた4WDモデル「カレラ4S」と、ターボを更にハイパフォーマンス化した「ターボS」が発売されました。
カレラ4S用のエンジンは最高出力285ps/6,100rpm・最大トルク34.7kgm/5,250rpmまで高められ、日本でも販売されたものの、日本向けカレラ4に搭載された3.8Lエンジンのパフォーマンスには及びませんでした。一方ターボSに搭載されたエンジンは、最高出力450ps/6,000rpm・最大トルク59.7kgm/4,500rpmのスペックを持ち、最高速度296km/h・0-100km/h加速3.9sの圧倒的な動力性能を発揮しました。
更に翌1997年、ターボ用ワイドボディにカレラ4S用のエンジンを搭載した2WDモデル「カレラS」が発売されました。そして1998年、993型は996型に後を譲り生産終了となりましたが、996型のエンジンがついに水冷化された為、993型は最後の空冷エンジン搭載ポルシェとなりました。