ベントレー・モーターズは1955年、「Rタイプ」の後継モデルとなる新型高級車「Sタイプ」をリリースしました。Rタイプの姉妹車種であった親会社ロールス・ロイスの「シルヴァードーン」が「シルヴァークラウド」にモデルチェンジされたことにともない登場したモデルで、Rタイプから性能向上が図られていました。
エクステリアを一新
シャシーは古典的なラダー式ながら、Rタイプから全面的にリニューアルされていました。ボディシェルはスチール製が踏襲されたものの、ボンネットフードやトランクフード、ドアにはアルミニウムが採用されました。エクステリア・デザインは、戦前型の影響が色濃く残っていたRタイプから遥かに近代化され、ほぼフラッシュサイド・フルワイズのフォルムとなりました。
ボディタイプは4ドアセダンと2ドアクーペが用意され、ボディの製造は従来同様ロールスロイスのほか、コーチビルダーによっても手掛けられました。標準版4ドア・セダンのボディサイズは全長5,385mm×全幅1,899mm×全高1,630mmで、Rタイプから全長・全幅が一回り拡大された一方、全高は若干低められました。
排気量を拡大
また、ホイールベースは延長されるとともに、3,100mmと3,200mmの2種類が用意されました。駆動方式はコンベンショナルなFRを踏襲し、エンジンはそれまでの4.6L直6から4.9L直6oise方式(吸気側OHV/排気側SV)SUツインキャブレター仕様に置換されました。最高出力や最大トルクは、引き続き公表されませんでした。
トランスミッションは従来オプション設定であった4速ATが標準化され、4速MTは廃止されました。パフォーマンスは最高速度166km/h・0-80km/h加速9.2s・0-400m加速18.9sで、いずれの数値もRタイプからわずかながらも向上を果たしていました。ブレーキは従来同様の4輪ドラム式で、タイヤは8.20×15サイズが装着されました。
また、従来同様にコーチビルダー製のボディを架装する高性能版「コンチネンタル」も用意されました。ボディタイプは2ドアのフィクスドヘッドクーペとドロップヘッドクーペのほか、従来は設定のなかった4ドアセダンも製造されました。エンジンは、標準モデル用をベースに圧縮比を高めるなどのチューンナップが施されており、最高速度192km/hの性能を発揮しました。
M/CでエンジンをV8 OHVに置換
その後1959年にマイナーチェンジが実施され「S2」に移行、従来のSタイプは識別のため「S1」と呼ばれるようになりました。ボディには基本的に変更はなく、エンジンがオールアルミニウム製の6.2L V8OHV SUツインキャブレター仕様に置換されたことが最大のトピックでした。最高出力は188psで、最高速度は183km/hまで向上しました。
次いで1962年に2度目のマイナーチェンジが実施され、「S3」に移行しました。エクステリア面ではヘッドランプが2灯式から4灯式に変更されるとともに、フロントグリルの丈が低められました。また、6.2L V8エンジンに改良が施され最高出力が203psに向上、それにともない最高速度も188km/hとなりました。
そして1965年、後継モデル「Tシリーズ」にバトンタッチして生産終了となりました。