シトロエンは1991年3月に、「AX」と「BX」の間を埋め、かつての「GS/GSA」と同クラスとなるニューモデル「ZX」を発表しました。AXが「プジョー・205」の姉妹車種であったのに対し、ZXは結果的に後に登場する一クラス上の「プジョー・306」の姉妹車種となりました。メカニズム面ではAXの延長線上にありシトロエン車ならではの個性は希薄だったものの、トータルバランスに秀でたモデルでした。
スタイリングはシトロエンとカロッツェリア・ベルトーネによる合作で、AXやBXよりも若干丸みを帯びたボディラインが特徴でした。ボディタイプは5ドアハッチバックがまず登場し、追って3ドアハッチバックの「クーペ」とステーションワゴンの「ブレーク」が加わりました。5ドアハッチバックのボディサイズは全長4,071~4,085mm×全幅1,688~1,707mm×全高1,386~1,404mm、ホイールベースは2,540mmでした。
サスペンションに独自の工夫
全長とホイールベースはBXよりもやや短く、GS/GSAに近いものでした。車両重量は945~1,055kgで、ボディ剛性を重視した結果軽量化を優先したBXよりも重くなっていました。サスペンションは、BXのようなハイドロ・ニューマチック方式ではなく一般的な金属バネ式で、形式はフロントがマクファーソンストラット式、リアがトレーリングアーム式でした。
但し必ずしも平凡な足回りではなく、リアのブッシュ形状の工夫によるセルフステアリング機能が備わっていました。駆動方式はFFで、エンジンは発売当初1.4L(最高出力75hp)、1.6L(最高出力89hp)、1.9L(最高出力130hp)の3種類のガソリン直4SOHCユニットが用意されました。トランスミッションは当初5速MTのみだったものの、翌年4速トルコン式ATが追加されました。
数多くのエンジンを設定
ブレーキはフロントがベンチレーテッドディスク式で、リアはグレードによりドラム式又はディスク式が採用されました。その後エンジンのバリエーションが拡大され、デビュー年の後半に1.9Lディーゼル(最高出力71hp)が、翌年に2Lガソリン(最高出力123hp)、1.9Lディーゼルターボ(最高出力92hp)、1.1Lガソリン、2LガソリンDOHC(最高出力155hp)、1.8Lガソリン(最高出力103hp)が相次いで投入されました。
日本にはまず1992年4月に、1.6Lエンジンを搭載する「クラブ」と1.9Lガソリンエンジンを搭載する「シュペール」の5ドアハッチバック2モデルが導入されました。次いで1994年10月に「クラブ」のエンジンが1.8Lに置換されると共に、同エンジンを搭載する「クーペ」が追加されました。同時に、ABSと運転席エアバッグが標準装備されました。続いて1995年2月に、同じく1.8Lエンジン搭載の「ブレーク」が追加されました。
そして1997年に後継モデルの「クサラ」に後を譲り、生産終了となりました。