フェラーリは1995年に、「F40」の実質的な後継モデルとなる新型スーパースポーツ「F50」を発表しました。コンセプトは「公道を走るF1」で、「公道を走るグループCカー」的な性格だったF40より更にスパルタンなモデルとなりました。ボディ構造や基本メカニズムはF1さながらで、市販モデルとしてトップレベルの走行性能を備えていました。
工場持ち込みで着脱するデタッチャブルトップ
ボディ構造は古典的なチューブラフレーム構造だったF40とは異なり、カーボン・コンポジット素材を使用したモノコック構造が採用され、軽量化・高剛性化が図られました。ボディタイプは、デタッチャブルトップが備わるバルケッタ仕様であったものの、トップを着脱する為には工場に持ち込む必要がありました。その為、オープンにした状態で雨を凌ぐ為の簡易的なソフトトップが備わっていました。
デザインを手がけたのはF40同様ピニンファリーナで、リアには大きなダウンフォースを発生させる巨大なウイングが備わっていました。Cd値は0.372で、F40の0.34から若干悪化していました。ボディサイズは全長4,480mm×全幅1,986mm×全高1,120mmで、F40より僅かに長く広く、そして低いディメンションでした。又、ホイールベースは130mm長い2,580mmに設定されました。
エンジンはF40のV8ターボからV12NAに
車両重量は、F40より130kg重い1,230kgとなっていました。F1並みにミッドにストレスマウントされるエンジンは、F40の2.9L V8DOHCターボに対し、4.7L V12DOHC NAが採用されました。燃料供給装置はF40のウェーバー・マレッリIAWシステムからボッシュ・モトロニックに変更され、11.3:1の圧縮比から最高出力513HP/8,000rpm・最大トルク47.9kgm/6,500rpmのアウトプットを発生しました。
F40の最高出力478HP/7,000rpm・最大トルク58.8kgm/4,000rpmに対して最高出力で勝り最大トルクで劣るスペックで、同時に高回転型の性格となっていました。組み合わせられるトランスミッションは、F40の5速MTに対しクロスレシオの6速MTが採用されました。パフォーマンスは、最高速度がF40より1km/hアップの325km/h、0-100km/h加速は0.4s短縮された3.7sでした。
サスペンションは他のフェラーリモデル同様4輪ダブルウィッシュボーン式が採用されると共に、ビルシュタイン製の電子制御ダンパーが装備されました。又、パワーアシストを持たないラック&ピニオン式のステアリング、ABSが備わらないノンサーボの4輪ベンチレーテッド式ディスクブレーキの採用などはF40と同様でした。
ホイールとタイヤは、F40のフロント:8.0J×17ホイール+245/40VR17タイヤ/リア:13.0J×17ホイール+335/35VR17タイヤに対し、フロント:8.5J×18ホイール+235/35ZR18タイヤ/リア:13.0J×18ホイール+335/30ZR18タイヤへとインチアップされました。そしてインテリアは、カーボンパネル剥き出しのスパルタンなものだったものの、F40同様エアコンが標準装備された他、新たに車載コンピューターが搭載されました。
生産台数は、増産が行われ最終的に1,311台が生産されたF40に対し、最初から349台の限定生産と定められ、349台目の生産が完了した1997年にそのまま生産終了となりました。