フィアットは1964年5月、1955年にリリースした大衆車「600」の上級車種となる「850ベルリーナ」を発売しました。スタイリングが一新され、ボディサイズも一回り拡大された一方で、駆動方式は手慣れたRR方式が踏襲されました。又、600同様に数々の高性能なアバルト・モデルが製造された他、スペインのセアト社によるラインセンス生産も行われました。
3ボックス型ボディを採用
ボディタイプは600同様2ドアセダンのみの設定で、スタイリングは2ボックス型の600に対し、短いリアデッキを持つ3ボックス型が採用されました。ボディサイズは全長3,575mm×全幅1,425mm×全高1,385mmで、600から全長が360mm、全幅が45mm拡大された一方、全高は20mm低くなりました。又、ホイールベースは27mm延長され2,027mmとなりました。
車両重量は600の後期型である「600D」から60kg程増加し、670kgとなりました。サスペンション形式は、フロントは600同様のウィッシュボーン+リーフ式で、リアはスイングアスクル+コイル式からセミトレーリングアーム+コイル式に変更されました。リアに搭載されるエンジンは、600D用をベースに排気量を843ccに拡大した水冷直列4気筒OHV(最高出力34.5ps/最大トルク5.15kgm)でした。
トランスミッションは4速MTが組み合わせられ、最高速度121km/hの性能でした。そして翌1965年、850シリーズの新たなファミリーとして、ワンボックス型5ドアステーションワゴンの「ファミリアーレ」、クーペ、そしてオープンボディの「スパイダー」の3タイプが新たにラインナップに加わりました。
次いで1968年、ベルリーナに仕様変更が実施され、クーペに搭載されていたハイチューン版エンジン(最高出力46.6ps/最大トルク6.1kgm)を搭載し、フロントにディスクブレーキを装備する「スペチアーレ」に移行しました。そして1971年に後継モデルとなる「127」が登場した事に伴い、翌1972年に生産終了となりました。
最高速度200km/hオーバーのモデルも
一方で前述したアバルト・モデルは、まず1964年に最高出力42ps/最高速度130km/hの性能を持つ「850/130」と、最高出力50ps/最高速度150km/hの性能を持つ「850/150」が登場しました。追って、排気量を1Lに拡大し最高出力を54psに高めた「OT1000ベルリーナ」がリリースされました。
更に、最高出力154psのアバルト自製1.6L直4DOHCエンジンを搭載し、専用の足回りや4輪ディスクブレーキ、専用エクステリアが備わる「OT1600」と、OT1600のエンジンを2Lまで拡大し、最高出力204ps・最高速度225km/hの性能を誇る「OT2000」も開発されました。しかしながら、OT1600は3台、OT2000は僅か1台の生産に留まりました。