ランチアは1988年に、1979年に発売した5ドアハッチバック・コンパトカー「初代デルタ」をベースに、WRC参戦を前提に高性能化を図ったホットハッチモデル「HFインテグラーレ」をリリースしました。その後順次改良が加えられ走行性能が更に向上、WRCで大きな実績を残すと共に、自動車評論家や一般ユーザーからも高い評価を得ました。
ワイドボディにターボエンジン+4WDの組み合わせ
スタイリングは、ジウジアーロの手によるベースモデルのボディを流用しつつ、ワイドタイヤを装着する為のブリスターフェンダーが装備されました。更に、パワーが高められたエンジンの冷却対策として、ライト廻り及びバンパーの通風口が拡大された他、ボンネットフード上にルーバーが設けられました。ボディサイズは全長3,900mm×全幅1,700mm×全高1,400mmで、ベースモデルから全幅が80mm拡大されました。
ホイールベースはほぼ同一の2,480mmで、車両重量は初期型で1,200kgでした。サスペンション形式はベースモデルと共通の4輪ストラット式を踏襲し、ブレーキは4輪ディスク式を受け継ぎながらフロントのディスク径が拡大されました。駆動方式は、前年に登場した「HF4WDターボ」と同様のビスカス式フルタイム4WDが採用されました。
エンジンも基本的にHF4WDターボと同一の2L直4DOHC 8バルブ・ターボながら、ブーストアップなどにより最高出力が18psアップの185ps、最大トルクが1.9kgmアップの29.1kgmに高められていました。トランスミッションは各ギアレシオも共通の5速MTを踏襲しつつ、ファイナルレシオがローギアード化されました。
改良版「16V」「エボルツィオーネ」は更に性能が向上
パフォーマンスは、最高速度は3km/h低下し206km/hとなったものの、0-100km/h加速は1.2s短縮され6.6sとなりました。次いで翌1989年に、更に戦闘力を高めるべく早くも改良版の「16V」が登場しました。文字通りエンジンを16バルブ仕様に変更すると共に、ブーストアップやインタークーラーの容量拡大などにより最高出力が200psまで高められ、最高速度は212km/hに向上しました。
8バルブモデルとの外観上の相違点は、ボンネットフードに設けられたパワーバルジやワイド化されたホイール&タイヤなどで、同時にトレッドも前後共に拡大されていました。次いで1991年に、パワートレインだけでなくボディや足回り、ブレーキなどにも改良のメスを入れ、総合性能を大幅に向上させた「エボルツィオーネ」が登場しました。
エンジンは改良によりスペックが最高出力210ps/最大トルク30.4kmgとなり、その他サスペンションのストロークアップやホイール&タイヤの変更、ブレーキの強化などが図られました。又、ボディは剛性が大幅に高められると共に、後付けだったブリスターフェンダーがボディ一体成型となり、リアゲートにはスポイラーが新設されました。この変更により、全幅は1,770mmに拡大されました。
続いて1993年には、更なる進化を遂げた「エボルツィオーネⅡ」が登場しました。電子燃料噴射装置の変更などにより、エンジンのスペックが最高出力215ps/最大トルク32kmgに向上した他、装備面ではABSやエアコンが標準化されました。動力性能も向上し、最高速度220km/h・0-100km/h加速5.7sとなりました。
そして1995年の欧州向け最終限定車「ディーラーズコレクション」のリリースをもって、HFインテグラーレの生産は終了となりました。日本市場にも各モデルが輸入された他、1995年には日本市場専用の限定車「コレッツィオーネ」がリリースされました。