本田技研工業は1980年2月、ホンダ・ベルノ店系列を通じて「シビック」と「アコード」の中間に位置する新型小型乗用車「クイント」を発売しました。開放的かつ広い室内空間とスポーティな走行性能を兼ね備えたモデルとして開発され、FFレイアウトや4輪ストラット式独立懸架サスペンションなど、シビック/アコードと共通の手慣れた機構が採用されました。
ボディは5ドアハッチバックのみ
ボディタイプは5ドアハッチバックのみのラインナップで、スタイリングはシビック/アコード譲りのシャープなフォルムと、大きなガラスエリアを持つ6ライトウィンドウの採用が特徴でした。ボディサイズは全長4,110mm×全幅1,605~1,615mm×全高1,355mm、ホイールベース2,360mmで、全長・全幅はシビック・ハッチバックよりも一回り大きく、アコード・ハッチバックに近いサイズでした。
エンジンは新開発された1.6L直4SOHC CVCC仕様のEP型(最高出力90ps/5,500rpm・最大トルク13.2kgm/3,500rpm)のみが用意され、トランスミッションは5速MT又はオーバードライブ付3速トルコン式AT「ホンダマチック」が組み合わせられました。又、ブレーキは全車にフロント:ディスク式/リア:ドラム式が採用されました。
ホンダ クイントのCM
上級グレードにパワステやハロゲンランプを装備
グレード体系は当初、下から「TL」「TS」「TE」の3タイプがラインナップされ、足回りはTLにフロント・スタビライザー付きサスペンション+6.15×13クロスプライタイヤが、TSにフロント・スタビライザー付きサスペンション+155SR13スチールラジアルタイヤが、TEに前後スタビライザー付きサスペンション+155SR13スチールラジアルタイヤが採用されました。
インテリア面では、大きく湾曲し助手席側がクリフカットされたデザインのインパネが採用されました。又、装備面ではTS/TEにテールゲートの閉め忘れや半ドア、ブレーキランプの球切れを知らせるセフティインジケーターやシートリフターが、更にTEにはパワーステアリングやハロゲンヘッドランプが標準装備されました。尚、エアコンは全車オプション扱いでした。
そして同年4月に最上級グレード「TER」が追加され、追って同年6月にはTE/TERにスチール製電動式サンルーフ仕様が追加されました。次いで翌1981年9月には、このモデル唯一となるマイナーチェンジが実施されました。そして1985年2月、後継車種「クイントインテグラ」にバトンタッチして生産終了となりました。
クイントは、シビックやアコードと異なり北米には輸出されなかったものの、欧州には「ホンダ・クインテット」として、オーストラリアには当時提携関係にあったローバーブランドによる「ローバー・クインテット」として輸出されました。