ジャガー・カーズは1975年9月、「Eタイプ」に代わる新たなスポーツモデル「XJ-S」をリリースしました。4ドアサルーンの「XJ」シリーズがベースで、ピュアスポーツカーであったEタイプと異なりグランツーリスモ的な性格の強いモデルとなりました。後のビッグマイナーチェンジで車名が「XJS」に変更され、1996年に後継モデル「XK8」が登場するまで生産が続けられました。
個性的なCピラーのデザイン
ボディタイプは当初、2+2シーター仕様の2ドアクーペのみが用意され、そのスタイリングは曲線的なEタイプとは対照的なシャープな造形や、ノッチバックでありながら側面からはファストバックに見えるCピラーの意匠が取り入れられた事が特徴でした。ボディサイズは全長4,880mm×全幅1,790mm×全高1,220mmで、全高を除きEタイプから一回り拡大されていました。
ホイールベースはXJサルーンSWB仕様から170mm短縮された2,590mmで、Eタイプに対しても100mm短いものでした。車両重量は1,680kgで、Eタイプに対し150kg程重くなっていました。サスペンション形式はXJシリーズと共通で、フロント:ダブルウィッシュボーン/コイル式・リア:ロワーウィッシュボーン+ラジアスアーム/ツインコイル式による4輪独立懸架が採用されました。
駆動方式はFRを踏襲、エンジンはEタイプやXJ12と共通の5.3L V12SOHCで、ゼニス4連キャブレターに代えルーカス機械式燃料噴射装置が装備され最高出力289ps/最大トルク40.6kgmのアウトプットを発生しました。トランスミッションは4速MT又は3速トルコン式ATとの組み合わせで、前者は最高速度246km/h・0-60mph加速6.7sの性能を発揮しました。
エンジンを変更しコンバーチブルを追加
そして1981年、エンジンを高効率な「ファイアボールヘッド」仕様(最高出力303ps/最大トルク44kgm)に置換した「XJ-S H.E」に移行しました。次いで1983年9月、3.6L直6DOHCエンジン(最高出力228ps/最大トルク33.1kgm)+5速MT又は4速トルコン式ATを搭載する「XJ-S3.6」と、同じパワートレインを搭載する2シーターコンバーチブル「XJ-SC3.6」が追加されました。
後者はオープン時にもBピラーが残るタルガトップスタイルで、Bピラーから前がデチャッタブルトップ、それより後ろが開閉式ソフトトップという変則的な構成になっていました。追って1985年には、V12エンジン搭載の「XJ-SC V12H.E」が追加されました。更に1988年5月、XJ-SCシリーズに代わるモデルとして、フルオープンコンバーチブルの「XJ-S V12コンバーチブル」がリリースされました。
ビッグM/Cで内外装を一新
次いで1991年のビッグマイナーチェンジで車名がXJSに変更されると共に、内外装デザインが刷新されました。同時に、直6エンジンの排気量が4Lに拡大され(スペックは最高出力225ps/最大トルク38.4kgm)、グレード名が「XJ-S4.0」となりました。追って1992年、全車に運転席SRSエアバッグシステムが標準装備されると共に、コンバーチブルにも4Lエンジン搭載車が設定されました。
続いて1994年には4Lエンジンが新世代のAJ16型に置換され、アウトプットが最高出力240ps/最大トルク38.9kgmとなりました。そして1995年にまずV12エンジン車が生産終了となり、翌1996年に残る直6エンジン車もXK8にバトンタッチして生産を終了しました。