ランチアは1996年のジュネーブ・ショーで、「ランチア/アウトビアンキ・Y10」に代わる新型Bセグメント・コンパクトカー「Y(イプシロン)」を発表しました。販売先の国によって2つのブランド名を使い分けていたY10に対し、全世界でランチア・ブランドに統一された他、極めて斬新な内外装デザインや上質感溢れるインテリアを採用するなど、このクラスのコンパクトカーに新風を吹き込みました。
エンリコ・フミアがデザインを担当
ボディタイプはY10同様3ドアハッチバックのみの設定で、デザインはピニンファリーナからランチアのデザインセンターに移籍したエンリコ・フミアにより手掛けられました。小型ボートをモチーフにしたとされるスタイリングは、無難に纏められていたY10よりも遥かにモダンかつ個性的なものでした。又、オプションカラーも含めると全112色ものボディカラーが用意される点も特徴でした。
ボディサイズは全長3,723mm×全幅1,690mm×全高1,435mmで、Y10から一回り以上拡大されました。プラットフォームは基本的に「フィアット・プント」と共通で、ホイールベースを2,380mmに短縮して使用するものの、Y10からは200mm以上ロングホイールベース化されました。車両重量も相応に増加し、初期型上級グレードで900kgとなりました。
サスペンション形式は、フロントはY10と同様のマクファーソンストラット式を踏襲する一方、リアはそれまでのユニークなオメガアーム・リジッド式から、一般的なトレーリングアーム式に変更されました。駆動方式はFFのみの設定で、Y10に存在したパートタイム4WDモデルは用意されませんでした。
個性的なデザインのインパネ
エンジンは当初、1.1L直4SOHC(最高出力55ps/最大トルク8.8kgm)及び1.2L直4SOHC(最高出力60ps/最大トルク10kgm)の「ファイア・ユニット」2種類と、1.4L直4SOHC(最高出力80ps/最大トルク11.4kgm)が用意されました。トランスミッションは、全車5速MTとの組み合わせでした。一方インテリアは、センターメーター採用による個性的なデザインのインパネを備えていました。
グレード体系は、下から「LE」「LS」「LX」の3タイプが用意されました。そして翌1997年に、「LX」用のエンジンが1.4Lから1.2L直4DOHC(最高出力86ps/最大トルク11.5kgm)に置換されると同時に、1.2L SOHC車にCVT仕様が追加されました。その後、エクステリアの一部を変更したスポーティグレード「エレファンティーノ・ブルー」(1.1L/1.2L SOHC)及び「エレファンティーノ・ロッソ」(1.2L DOHC)が追加されました。
次いで2001年にマイナーチェンジを受け、フェイスリフトやステアリングホイールのデザイン変更などが実施されると共に、1.1L車がカタログ落ちしました。同時に1.2Lエンジンがモディファイを受け、スペックがSOHCは最高出力60ps/最大トルク10.4kgmに、DOHCは最高出力80ps/最大トルク11.6kgmになりました。そして2002年に、2代目モデルとなる「イプシロン」にバトンタッチして生産終了となりました。
後継モデル:イプシロン