1988年のジュネーブ・ショーで久々の2シーター・クーペとなる「カリフ」発表したマセラティは、追って1989年12月に更に高性能なスポーツクーペ「シャマル」を発表、翌1990年7月にリリースを開始しました。プラットフォームは基本的にカリフやその前身である「スパイダー・ザガート」と共通であるものの、それらとは全く異なる雰囲気のボディが与えられた事が特徴でした。
デザインはガンディーニが担当
マルチェロ・ガンディーニによりデザインされたエクステリアは、張り出した前後のブリスターフェンダーやプロジェクターヘッドランプ採用の精悍なフロントマスク、フロントウィンドウ直前に設けられたスポイラーなど、エレガントなカリフ/スパイダー・ザガートとは対照的に挑戦的なムードに溢れるものでした。
ボディサイズは全長4,100mm×全幅1,850mm×全高1,300mmで、全長と全高はカリフと大差ないものの、全幅が130mm以上ワイド化されていました。又、ホイールベースは同一の2,400mmとなる一方、トレッドはカリフから大幅に拡大されフロント:1,530mm/リア1,550mmとなりました。車両重量は1,430kgで、カリフから120kg増加しました。
サスペンション形式は、カリフと共通のフロント:マクファーソンストラット式/リア:セミトレーリングアーム式を踏襲するものの、リアの剛性が強化されると共に、フロントのみだったスタビライザーがリアにも装着される点が異なっていました。その他、FRの駆動方式やラック&ピニオン式のステアリング形式、フロントがベンチレーテッド型の4輪ディスクブレーキなどはカリフから受け継がれました。
エンジンは新開発のV8を搭載
一方、エンジンはカリフの2.8L V6SOHC18バルブ・ツインターボに代わり、新開発された空冷インタークーラー付きツインターボの3.2L V8DOHC32バルブが搭載されました。燃料供給装置はカリフと同様ウェーバー・マレリ製フューエルインジェクションで、7.5:1の圧縮比から最高出力325ps/6,000rpm・最大トルク44.5kgm/2,800rpmのアウトプットを発生しました。
このスペックは、カリフを75ps/5.3kgm上回るものでした。カリフよりもギア数が1段多いゲトラク製6速MTとの組み合わせによるパフォーマンスは、最高速度がカリフの30km/h増しとなる270km/hに向上した他、0-100km/h加速5.3s、0-1000m加速24.9sというスーパーカー級の実力を発揮しました。
又、ホイール&タイヤサイズはフロント:8.0J×16+225/45ZR16/リア:9.0J×16+245/45ZR16で、増大したパワーを受け止めるべくカリフからインチアップ及びワイド&扁平化が図られていました。シャマルは販売開始以降目立った仕様変更は行われず、1996年までの6年間に合計369台が生産されました。