マツダ ルーチェ ロータリークーペ 1969
マツダは1967年の東京モーターショーで、小型乗用車「ルーチェ」がベースのロータリーエンジン搭載プロトタイプモデル「RX87」を出展、翌1968年の東京モーターショーでは内外装を手直しした最終試作型が公開されました。そして1969年10月に、市販モデル「ルーチェロータリークーペ」となって販売が開始されました。最大の特徴は、同社のロータリーエンジン車史上唯一となるFF方式が採用された事でした。
ピラーレスハードトップボディを採用
ボディタイプは、クーペを名乗るものの実態はピラーレスの2ドアハードトップで、三角窓を排した事と相まって実現したスッキリしたサイドビューは、イタリアン・テイストの流麗なフォルムと共に新鮮味を感じされるものでした。又、当時の流行の先端であった、ルーフからCピラーにかけてを覆うレザートップも用意されました。
マツダ ルーチェ ロータリークーペ 1969
ボディサイズは全長4,585mm×全幅1,635mm×全高1,385mmで、ルーチェセダンよりも全長が215mm延長された一方、全高は25mm低く設定されました。又、ホイールベースは80mm長い2,580mmで、車両重量は1,185～1,255kgでした。サスペンション形式は、フロントがウィッシュボーン/トーションラバー式、リアがセミトレーリングアーム/コイル式による4輪独立懸架でした。
マツダ ルーチェ ロータリークーペ 1969
ルーチェセダンがリジッド式のリアサスペンションを採用し、フロントにコイルスプリング、リアにリーフスプリングを用いていたのに対し、遥かに先進的な構造でした。又、タイヤは当時の国産車では少数派だったラジアルタイヤ(サイズは165HR15)が採用されました。そしてFF方式の採用は、ルーチェセダンも含め従来普通車ではFR方式を採用し続けてきた同社としては初の試みとなりました。
エンジンは新開発の13A型を搭載
ステアリング形式は、パワーアシストが備わるラック&ピニオン式でした。ロータリーエンジンは、「コスモスポーツ」や「ファミリアロータリークーペ」に搭載された10A型ではなく、新開発された655cc×2ローターの13A型(最高出力126ps/6,000rpm・最大トルク17.6kgm/3,500rpm)が採用されました。排気量が約3割拡大された事で、スペック面では最大トルクが顕著に向上しました。
マツダ ルーチェ ロータリークーペ 1969
トランスミッションは4速フロア式MTが組み合わせられ、最高速度190km/h・0-400m加速16.9sの動力性能が謳われました。一方インテリアは、大型の丸形3眼式メーターと3本スポーク式ステアリグホイールを採用したスポーティなもので、装備面ではカークーラーも用意されました。グレード体系は、「DX」と「スーパーDX」の2タイプが設定されました。
しかし販売面では振るわず、発売から僅か3年後の1972年9月に生産終了となりました。その要因として、高価であった事に加えメカニズムの熟成不足によるトラブルの発生や、操縦安定性に難があった事などが挙げられました。総生産台数は、コスモスポーツにも及ばない976台に終わりました。
