ポルシェAGは2005年、前年に2代目に移行させた2シーター・オープン・スポーカー「ボクスター(987型)」をベースとした2シーター・フィクスドヘッド・スポーツカー「ケイマンS」を発売しました。プラットフォームや基本メカニズムはボクスターと共通であった一方、より高性能なエンジンが搭載され、強化されたボディ剛性と相まって一段と優れたパフォーマンスを発揮しました。
専用フロントマスクを採用
ボディタイプはリアゲートが備わる3ドアで、リアエンドには固定式と電動ポップアップ式の2枚のスポイラーが装備されました。スタイリングは、Aピラーから前の部分は基本的にボクスターと共通であったものの、ヘッドランプやバンパーなどに独自の意匠が採用されました。空力特性はボクスターと同等で、Cd値は0.29でした。
ボディサイズは全長4,341mm×全幅1,801mm×全高1,305mmで、ボクスターから全長と全高がわずかに拡大されていました。一方、2,415mmのホイールベースに変更はありませんでした。サスペンション形式は、ボクスターと共通の4輪マクファーソンストラット式を踏襲しながらも強化が図られていました。また、オプションで電子制御可変ダンピングシステムの「PASM」が用意されました。
ボクスター同様ミッドに搭載されるエンジンは、ボクスター用をベースにボアアップを図った3.4L水平対向6気筒(最高出力295ps/6,250rpm・最大トルク34.7kgm/4,200~6,000rpm)が採用されました。組み合わせられるトランスミッションはボクスターS同様、6速MTまたはマニュアルモード付5速トルコン式AT「ティプトロニック」でした。
エントリーモデルを追加
MT仕様を選んだ場合のパフォーマンスは、最高速度275km/h・0-100km/h加速5.5sでした。また、ブレーキはボクスター同様4輪ベンチレーテッド・ディスク式で、オプションでセラミックブレーキが用意されました。その後2006年にフェイスリフトが実施されると同時に、2.7L水平対向6気筒エンジン(最高出力245ps/6,500rpm・最大トルク27.8gm/4,600~6,000rpm)を搭載するエントリーモデル「ケイマン」が追加されました。
トランスミッションは、ケイマンS同様6速MTまたは5速ティプトロニックとの組み合わせで、前者は最高速度260km/h・0-100km/h加速6.1sの性能でした。次いで2008年に2度目のフェイスリフトが実施されるとともに、ケイマンのエンジンが2.9Lに拡大されアウトプットが最高出力265ps/7,200rpm・最大トルク30.6kgm/4,400~6,000rpmとなりました。
高性能版「ケイマンR」を追加
一方、ケイマンSは排気量こそ従来から変更はなかったものの、アウトプットが最高出力320ps/6,250rpm・最大トルク37.7kgm/4,750rpmまで向上しました。また、ATがそれまでのティプトロニックからデュアルクラッチ式の7速PDKに変更されたことも大きなトピックでした。続いて2010年には、ケイマンSをベースにさらなる高性能化を図った「ケイマンR」が追加されました。
20mmローダウンと55kgの軽量化を図ったボディに、3.4Lエンジンの最高出力を330ps/7,400rpmに高めて搭載するモデルで、PDK仕様は最高速度280km/h・0-100km/h加速4.9sのパフォーマンスを発揮しました。そして2012年にフルモデルチェンジが実施され、現行981c型に移行しました。