トヨタのキャブオーバー型小型商用車「ミニエース」は、1967年11月にまずトラックタイプが「トヨエース」の弟分として登場、追って翌1968年2月にワンボックスタイプが追加されました。小型乗用車の初代「パブリカ」の基本メカニズムを流用して製造され、軽商用車を凌ぐ500kgの積載量と軽商用車並みの取り回しの良さ、そして価格の安さから人気を博しました。
様々なボディバリエーションを設定
スタイリングは、丸型2灯式ヘッドランプを採用した愛嬌あるフロントマスクが特徴でした。又、フロントウィンドウ下部には、当時のキャブオーバー型商用車によく見られた換気用のベンチレータースリットが備えられていました。ボディバリエーションは、トラックには標準車の他に幌付きや鳥居付き、フラットデッキ、アルミバンがラインナップされました。
一方ワンボックスには、4人乗り/5人乗りのバンと2人乗りのルートバン、そして7人乗りの「コーチ」が設定されました。ボディのスペックは、コーチの場合で全長3,585mm×全幅1,380mm×全高1,630mm、ホイールベース1,950mm、車両重量740kgで、全長・全幅の数値はベースモデルのパブリカに近く、ホイールベースはそれよりも180mm短いものでした。
パブリカ譲りの空冷エンジンを搭載
サスペンション形式はフロントがウィッシュボーン/リーフ式、リアがリジッド/リーフ式でした。駆動方式はパブリカ同様FRで、エンジンも共通の空冷800cc4サイクル2気筒OHVの2U-B型(最高出力36ps/4,600rpm・最大トルク6.3kgm/3,000rpm)が搭載されました。トランスミッションは、パブリカバン/トラックと共通のギア比を持つ4速コラム式MTで、最高速度110km/hの性能でした。
そして1969年10月にマイナーチェンジを実施し、エクステリア面ではベンチレータースリットの大型化やサイドターンシグナルランプの新設、インテリア面では助手席用シートベルトやヘッドレストの標準化が行われた他、装備面では4ウェイハザードランプが採用されました。同時に、トラックに上級グレードとなる「デラックス」が追加されました。
次いで1971年3月に2度目のマイナーチェンジを実施し、ベンチレータースリットが廃止された他、サイドターンシグナルランプのレンズがクリアからアンバーに変更されました。そして、1975年末に昭和50年排出ガス規制の適用が開始になり、空冷エンジン故に同規制をクリアする事が困難であったミニエースは、1975年12月にそのまま生産終了となりました。
後継モデルは製造されず、1970年から販売されていた兄貴分となるトラック/ワンボックス車「ライトエース」が、エントリーモデルとしての役割を受け継ぎました。