1974年に親会社であったシトロエンから提携関係を解消されたマセラティは、再び経営難に陥り存続の危機に晒されました。しかし、かつてマセラティと縁のあったデ・トマゾが救いの手をさしのべ、1975年8月に正式にデ・トマソ傘下に入りました。それから半年余り後の1976年のジュネーブ・ショーで、早くも新体制化で初となるニューモデル「キャラミ」が発表されました。
ボディはデ・トマソ車の流用
しかし、設計はマセラティのオリジナルではなく、4年前に登場したデ・トマソの2+2グランツーリスモ「ロンシャン」の実質的な姉妹車種でした。スタイリングは、カロッツェリア・ギアのデザインによるロンシャンのノッチバック2ドアクーペボディをベースに、フロント廻りとリア廻りの意匠をペトロ・フルアの手によりモディファイしたものでした。
フロント廻りは、ヘッドランプが角形2灯式から丸形4灯式に変更されると共に、ランチア独特のフロントグリルが与えられました。又、リア廻りはコンビネーションランプのデザイン変更などと共に、マフラーが4本出しから2本出しに変更されました。ボディサイズは全長4,580mm×全幅1,850mm×全高1,270mmで、ロンシャンに類似したディメンションでした。
ホイールベースは同一の2,600mmで、1,691kgという車両重量は僅かに軽量に抑えられていました。又、4輪ダブルウィッシュボーン式のサスペンション形式や、パワーアシストが備わるラック&ピニオン式のステアリング形式、リアがインボード型の4輪ディスク式のブレーキなどの基本メカニズムも、ロンシャンからそのまま受け継がれました。
マセラティ キャラミの動画
エンジンはマセラティ製を採用
一方エンジンは、フォード製5.7L V8OHVを搭載するロンシャンとは異なり、「インディ」に搭載されていたマセラティ自前の4.2L V8DOHCが採用されました。4基のウェーバーDCNFキャブレターを備え、8.5:1の圧縮比から最高出力270ps/6,000rpm・最大トルク40kgm/3,800rpmを発生、ZF製5速MTとの組み合わせにより最高速度237km/h・0-100km/h加速8sのパフォーマンスを発揮しました。
一方インテリアは、インパネやステアリングホイールのデザインなどがマセラティ流にモディファイされ、ロンシャンとの差別化が図られていました。そして1978年に、エンジンが同じくマセラティ製の4.9L V8DOHC(最高出力280ps/5,600rpm・最大トルク40kgm/3,000rpm)に置換され、最高速度が245km/hに向上しました。同時に、3速トルコン式ATが選べるようになりました。
キャラミはマセラティの主力モデルとして1983年まで生産が継続され、日本にもガレージ伊太利屋の手によりごく少数が輸入されました。