今から10年ほど前、友人が車を手放すというので引き取ったことがあります。W123の280CE。1970年代後半から1980年代中盤まで生産されたW123シリーズの2ドアクーペ版です。W114の後継機種として開発され、クーペのほかにセダンやワゴンもありました。ちなみにワゴンボディをメーカーとしてのメルセデスが生産した最初の機種でもあります。
友人から10万円で
さてこの280CE、個人売買の信用買いでしたので、友人の言い値で10万円。もちろん、納車にあたっての整備なんてものはありませんので、程度は良くありませんでしたが、なかなかに思い出深い車ではあります。
まず、ボディには錆がありました。鉄板が分厚いと言われていた当時のメルセデスですから、腐食がどんどん進んで・・・というものではありませんでしたが、トランクのレインチャンネル(雨どい)が落ち葉で詰まってしまい、雨水が流れたり溜まったりする想定がされていなかったであろうリアランプ上部が錆びてしまい、穴が空いていました。またエンジンとミッション(4AT)の機嫌もあまり良くありません。特にミッションはシフトショックが大きく、場合によっては異音までするので、早急に対処が必要な状態でした。
AT修繕と全塗装
知り合いの整備工場に持ち込んで、とりあえずのAT修繕と全塗装。雑誌で見てあこがれていたサンドベージュをオーダーしたにもかかわらず、どう見てもオレンジジュースを飲み過ぎた●●(自粛)のような色味!ネオヒストリックとしての品格は一気になくなりました。
では走ってみてどうだったか。排ガス規制への対処を迫られた時期のエンジンは、もっさりと、それはそれは重厚に回ります。DOHCなのにいわゆる「カムに乗る」ような感覚は全くありません。鼻先のスリーポインティッドスターを隠してしまいたくなるほどの鈍牛で、軽自動車にも太刀打ちできませんでした。
高速道路で開眼
粗ばかりが目立つなあと思いながら乗っていたある日、所要で高速道路へ。すると、びたっと安定しつつ、タイアのごつごつ感は見事に感じません(というか、若干ふわふわ・・・ショック死んでた?)。するとここで突如として開眼しました!これが雑誌に載っていた、「乗り味」というものの端っこではないか!国産車ばかり乗り継いでいたのでわかりませんでしたが、このW123は、「儂の目の前を走るな!」とばかりに庶民の車を蹴散らして爆走するベンツではなく、「庶民は大変だね~」とクルーズする「メルツエデス」でもなく、ジーパンのように気負わず、のほほ~んとマイペースな足車だったのです。
そんなこんなでW123の魅力に気づいてからは、今ではほとんどないハードトップの解放感を存分に味わいながら、琵琶湖周遊を何度も重ねることになりました(ハードトップの解放感=リアの窓を開けるとサッシが残りません。頻繁にあけるようになると、ある日窓が上がらなくなりました)。友人を載せても、「ずもももも~」という割に加速しない感覚が面白かったらしく、遠慮なく「ポンコツ」と呼んでくれた割には、必ず「迎えに来てくれ~」と連絡がありました。
W123をもう一度手に入れるのも悪くない
またホームセンターに買い出しに行くと、駐車場で初老の紳士が「いやー、趣のある車ですね~」といいつつ、「なんていう色ですか?」と尋ねられたり・・・。不思議と嫌だな~という思いではありません。今はもう手元にはありませんが、いつか余裕ができたら、(ちゃんと整備された)W123をもう一度手に入れるのも悪くないと思いつつ、中古車の流通状況をチェックする日々です。