自動車には基本的に4個のタイヤが付いていて、それによって路面に力を伝えて走っています。自動車の駆動方式は、自動車の特性に強く影響する要素の一つです。ここでは、昔から存在している4種類の駆動方式について説明を行います。
中小型車では主流となっているFF
最近の車で最も多いのがFFです。これはフロントエンジン・フロントドライブのことで、エンジンを車体前方に積み、前輪を駆動している事を表しています。
この方式の良い所はエンジンを横方向に積むために、室内空間が広く使える事です。そのため、軽自動車やコンパクトカー、ミニバンなど様々なタイプの車に幅広く採用されています。
その一方で、タイヤの駆動と操舵を前輪のみで行うので、ハンドリングは鈍く車両の重量配分も前が重くなる傾向にあります。昔は、こういったデメリットが目立っていた為、走り好きの人の間ではあまり評価されていませんでしたが、最近の車では電子制御デバイスや巧みなレイアウトなどの効果で、昔に比べると格段にハンドリング性能も向上しています。
スポーティな走りが楽しめるFR
FRは、フロントエンジン・リアドライブで、エンジンが前方に搭載され、後輪が駆動されるものです。前輪は操舵のみ、後輪は駆動のみと明確に役割が分かれているため、昔からハンドリングが良く、スポーツ走行が行いやすいパッケージングと考えられていました。
エンジンは駆動力をドライブシャフトを介して後輪に伝えるため、車体進行方向に対して縦置きにするのが一般的です。そのため、ボディ形状もフロントボンネット部が長く、乗員の乗るキャビンが車体の後方に位置するロングノーズショットデッキスタイルに必然的になります。
このため、FR車にはスタイリングもスポーティーなものが多いです。その一方で、乗員空間は圧迫されています。
より走りに特化したMR
MRは、ミッドシップエンジン・リアドライブという方式です。この方式は、乗員の後方にエンジンが位置しており、後輪を駆動するパッケージです。このタイプを採用するのはスポーツ走行を前提に作られた車で、F1などもこの方式となります。
スポーツ走行時に重要となる車体前後の重量配分、そして慣性モーメントを減らす為、質量のあるものをできる限り車体中心部に持ってくるという点においては、この駆動方式が最も優れています。しかし、基本的にこのタイプの車は2シーターとなり、実用性には乏しくなります。
悪路走行に優れた4WD
最後が、4WDです。この方式は4ホイールドライブと呼ばれており、その名の通り4輪全てを駆動します。4輪全てが駆動している為、悪路走破性が高く、雪の多い地域では必須とも言われる方式です。
かつては、4WDというと曲がらないイメージがありましたが、最近では電子制御デバイス等の恩恵もあり、各タイヤへの駆動力を状況に応じて最適化する事で、コーナリングが楽しめる車両も増えています。それに加えて、直進安定性や悪路での安心感もあるため、非常に優れた駆動方式です。
欠点としては、燃費が2輪駆動の車両に比べて悪くなる、車両価格が高くなるという点が挙げられます。
以上が、代表的な4種類の駆動方式です。但し、最近ではハイブリッドカーのようにエンジンとモーターという二つの動力源から取り出した駆動力を、複雑なシステムを介して2輪あるいは4輪に伝えているタイプも増えてきています。もしかすると、今後は現在主流の4タイプに分類できないタイプも登場するかもしれません。