ルノーは1976年1月、新型ハッチバックコンパクトカー「14(キャトーズ)」を発表しました。同クラスのベンチマークである「フォルクスワーゲン・ゴルフ」の対抗馬として開発されたモデルで、縦置きFF方式に拘っていたルノーとして初の横置きFF方式が採用されました。持ち味は、斬新なスタイリングと優れた居住性でした。
クラストップレベルの居住性
ボディタイプは5ドアハッチバックのみの設定で、スタイリングはウェッジシェイプのフォルムや膨らんだ前後フェンダーなど、当時として最先端のデザインテイストが取り入れられていました。ボディサイズは全長4,025mm×全幅1,624mm×全高1,405mmで、ゴルフとの比較では全長が300mm程長く設定されていました。
又、2,498mm(右)/2,530mm(左)に設定されたホイールベースも、ゴルフより100mm前後長いものでした。この大柄なボディと室内スペースの確保に有利な横置きエンジン方式の採用により、クラストップレベルの居住性を実現していました。又、取り外しも可能なリアシートの採用による優れたユーティリティもセリングポイントでした。
エンジンはプジョーのコンパクトカー「104」と共通の、プジョー/ルノー/ボルボ3社共同開発による1.2L直4SOHCシングルキャブレター仕様(最高出力58hp/最大トルク9.4kgm)が搭載され、トランスミッションは4速MTが組み合わせられました。又、サスペンション形式は、フロント:ストラット式/リア:トレーリングアーム式が採用されました。
高性能版「TS」を追加
ブレーキはフロントのみにディスク式が装備され、タイヤは145SR13サイズが装着されました。グレード体系は当初、標準グレード「L」と上級グレード「TL」の2タイプのラインナップだったものの、1979年に1.2Lエンジンのアウトプットを最高出力69hp/最大トルク9.8kgmに高めて搭載するスポーティグレード「TS」が追加されました。
次いで翌1980年にフェイスリフトが実施され、フロント廻りの意匠が変更されると共に、TSのパワートレインが1.4L直4SOHCシングルキャブレター仕様エンジン(最高出力70hp/最大トルク10.8kgm)と5速MTの組み合わせに変更されました。同時に、L/TLにも5速MTがオプション設定されました。
そして1981年に、3ボックス型4ドアボディを持つ同一クラスのニューモデル「9」がデビュー、更に1983年にそのハッチバック版である「11」が登場すると、14はそれと入れ替わる形で生産終了となりました。14はルノーの意欲作であったものの、個性的なスタイリングが大衆に理解されず、販売は振るいませんでした。