BMWは1968年に開催されたパリ・サロンにおいて、6気筒エンジン搭載のニューモデルとして大型セダン「2500/2800」とともに2ドアクーペの「2800CS」(E9型)を発表しました。前者が新設計のボディを持っていたのに対し、E9型は1965年にリリースされた4気筒エンジン搭載のクーペ「2000C/2000CS」をベースにフェイスリフトを施したものでした。
フロントマスクを一新
スタイリングは、2000C/2000CSから直線基調のプレーンなフォルムを踏襲しつつ、フロントマスクはそれまでの一体型ヘッドランプに代わり2500/2800同様の丸型4灯式ヘッドランプを採用するなど、大きくイメージを変えました。ボディサイズは全長4,658mm×全幅1,681mm×全高1,377mmで、2000C/2000CSから全長が130mmほど延長されていました。
また、ホイールベースも66mm延長され2,616mmとなったほか、車両重量は155kg重い1,355kgとなりました。サスペンション形式は、2000C/2000CS同様のフロント:マクファーソンストラット式/リア:セミトレーリングアーム式が踏襲されました。駆動方式もFRを踏襲し、エンジンは2.8L直6SOHCソレックス・ツインキャブレター仕様(最高出力170ps/最大トルク24.1kgm)が搭載されました。
組み合わせられるトランスミッションは4速MTまたは3速トルコン式ATで、4速MT仕様のパフォーマンスは最高速度が200km/h、0-100km/h加速が8.3sでした。2000CSとの比較では最高速度が23km/h速く、0-100km/h加速タイムは2.1s短縮されていました。ステアリング形式は2000C/2000CSと同様のウォーム&ローラー式を踏襲しながら、パワーアシスト付となりました。
排気量を拡大し性能が向上
ブレーキはフロント:ディスク式/リア:ドラム式の形式を踏襲しつつ、パワーアップに対応するため前後とも大径化が図られました。その後1971年4月に2800CSに代わるモデルとして、3L直6SOHCソレックス・ツインキャブレター仕様エンジン(最高出力180ps/最大トルク26kgm)を搭載し、フロントのディスクブレーキをベンチレーテッド型に変更した「3.0CS」が登場しました。
そのパフォーマンスは、最高速度が211km/h、0-100km/h加速が8.2sに向上を果たしていました。追って翌5月には、この3.0CSをベースにアルミ製のエンジンフードやトランクリッド、ドアなどを採用した「3.0CSL」が追加されました。3.0CSから200kgもの軽量化を実現したことにより、パフォーマンスは最高速度213km/h・0-100km/h加速7.3sに向上していました。
さらに同年9月、3L直6エンジンのボッシュDジェトロニック燃料噴射仕様版(最高出力200ps/最大トルク28.2kgm)を搭載し、最高速度220km/hの性能を持つ「3.0CSi」が追加されました。次いで1972年8月にCSLが仕様変更を受け、前後にスポイラーが装着されるととともにエンジンの排気量が17cc拡大されました。
追って翌1973年には、CSLのエンジンが3.2L直6SOHCボッシュDジェトロニック燃料噴射仕様(最高出力206ps/最大トルク29.2kgm)に置換されました。さらに1974年、燃費に優れたエントリーモデルとして、2.5L直6SOHCゼニス・ツインキャブレター仕様エンジン(最高出力150ps/最大トルク21.5kgm)を搭載する「2.5CS」が追加されました。
そして1976年に後継モデル「6シリーズ」がデビューしたことを受け、E9型は2年後の1978年に生産終了となりました。