イギリスの高級スポーツカーメーカーであるアストンマーティン・ラゴンダは1972年4月、1969年に「DBS」のV8エンジン搭載バージョンとしてリリースしたグランツーリスモ「DBS V8」にマイナーチェンジを施すとともに、車名を「V8」に変更しました。基本設計に大きな変更はなかったものの、ボディ・バリエーションの拡充が図られました。その後、17年間にわたって生産が続けられるロングセラーモデルとなりました。
コンバーチブルも用意
2+2シーター仕様を踏襲するボディのバリエーションは、従来同様の2ドア・クーペに加え、2ドア・コンバーチブルの「ヴォランテ」がラインナップされました。また、3ドア・シューティングブレークも製造されました。スタイリングは、基本的にはDBS V8と共通であったものの、フロントマスクはヘッドランプが4灯式から2灯式に変更されるとともに、グリルの意匠も変更されました。
ボディサイズは全長4,623mm×全幅1,829mm×全高1,327mmで、DBS V8から全長が38mm延長されました。ホイールベースは実質的に同等の2,610mmで、車両重量は100kg以上増加し1,814kgとなりました。サスペンション形式は、DBS V8同様のフロント:ダブルウィッシュボーン式/リア:ド・ディオン・アクスル式が踏襲されました。
駆動方式もFRが踏襲されたほか、エンジンも5.3L V8DOHCボッシュ燃料噴射仕様(※スペックは未発表)がキャリオーバーされました。トランスミッションは、ZF製の5速MTとクライスラー製の3速トルコン式ATが設定されました。また、4輪ディスク式のブレーキは、従来のソリッド型からベンチレーテッド型にアップデートされました。
そのほか、ラック&ピニオン式を踏襲するステアリングは、ロック・トゥ・ロックがそれまでの3.3回転から2.9回転へとクイック化されました。そして翌1973年に、カリフォルニア州の排出ガス規制に対応するため、ボッシュ燃料噴射システムに代わりウェーバー4連キャブレターが装着されました。最高出力は、当初は314psを発生しました。
高性能版を追加
しかし、翌1974年に309ps、さらに1975年には292psへと低下をきたしました。次いで1977年、エクステリアが一部変更されたボディに、5.3L V8エンジンの最高出力を380psまで高めて搭載する高性能版「ヴァンテージ」が追加されました。さらに翌1978年10月にはマイナーチェンジが実施され、エクステリア面ではボンネットフード上のエアインテークが廃止されました。
また、アメリカ市場向けモデルには大型バンパーが装着されました。次いで1986年に2度目のマイナーチェンジが実施され、ウェーバー4連キャブレターに代わりウェーバー・マレッリ燃料噴射システムが採用されました。そして1989年、後継モデル「ヴィラージュ」の発売にともない、V8シリーズは生産終了となりました。