ダイムラー・クライスラー(現:ダイムラー)100%出資の子会社「smart」は、2003年にW450型「スマート・フォーツー」をベースとしたスポーツカー「スマート・ロードスター」および「スマート・ロードスタークーペ」を発売しました。前者が電動ソフトトップが備わるセミオープンモデル、後者がフィクスドヘッドボディのクーペで、いずれもフォーツーの基本コンポーネンツが流用されました。
長く低いフォルム
車体の構造は、フォーツー同様「トリディオンセーフティセル」と呼ばれる高剛性フレームと樹脂製ボディパネルの組み合わせでした。スタイリングは背の高いワンモーションフォルムを持つフォーツーとは対照的に、低く構えたスポーツカー然としたフォルムが採用されました。ボディサイズは全長3,427mm×全幅1,615mm×全高1,207mmで、フォーツーよりも遥かに長く低いディメンションでした。
また、ホイールベースも500mm以上長い2,360mmに設定されていました。車両重量はロードスターが790kg、ロードスタークーペが815kgで、いずれもフォーツーからは増加していたものの、絶対的には依然として軽量でした。駆動方式はRRを踏襲し、リアに搭載されるエンジンは0.7L直3SOHCターボのチューンナップ版(最高出力82ps/5,250rpm・最大トルク11.2kgm/2,250rpm)が採用されました。
トランスミションはフォーツー同様、「ソフタッチ」と呼ばれるシングルクラッチ式6速AMT(2ペダルMT)が組み合わせられ、最高速度175km/h(ロードスター)・180km/h(クーペ)、0-100km/h加速10.9sの性能を発揮しました。サスペンション形式は、フォーツー同様のフロント:ストラット式/リア:ド・ディオン式が踏襲され、ブレーキも同様にフロントにディスク式、リアにドラム式が採用されました。
高性能版のブラバスを追加
タイヤは前後で異なるフォーツーに対し前後共通のサイズで、ロードスターには185/55R15が、ロードスタークーペには205/45R16が装着されました。その後2004年に、専用の内外装や強化された足回りなどが備わるボディに、0.7Lターボエンジンを最高出力101ps/5,600rpm・最大トルク13.3kgm/2,500-5,300rpmまでチューンナップして搭載する「BRABUS(ブラバス)」がリリースされました。
そして2006年をもって全車生産を終了、2代目以降には本車のようなスポーツモデルは設定されなかったため、1代限りの希少な存在となりました。日本市場においては、2003年9月にロードスター/ロードスタークーペが同時に上陸を果たしました。いずれもフォーツー同様、右ハンドル仕様のみの設定でした。
次いで2004年6月、BRABUSおよびクーペBRABUSが台数限定で導入されました。続いて2005年3月には、標準モデルをベースに仕様向上を図った特別仕様車「リミテッド」が設定されました。