かつてサーブの自動車部門として存在したサーブ・オートモビルは、1984年に「900」の上位に位置するフラッグシップモデル「9000」を発売しました。フィアット社との協業による「ティーポ4プロジェクト」により開発されたモデルで、「フィアット・クロマ」「アルファロメオ・164」「ランチア・テーマ」とはプラットフォームを共有する姉妹車種の関係にありました。
優れた空力特性を実現
当初のボディタイプは、のちに「CC」と呼ばれることとなるファストバックの5ドアハッチバックのみのラインナップでした。スタイリングはサーブならではの強烈な個性が薄れ、無国籍風かつコンサバティブな雰囲気に変貌しました。空力特性は優秀で、Cd値0.34を実現していました。ボディサイズは、全長4,623mm×全幅1,765mm×全高1,430mmでした。
900と比較すると、ショート&ワイドなディメンションとなっていました。一方で、ホイールベースは99よりも150mmも長い2,667mmに設定されました。駆動方式はそれまでのサーブ車同様FFで、エンジンは当初2L直4DOHCターボ(最高出力175ps/最大トルク27.8kgm)のみの設定でした。組み合わせられるトランスミッションは5速MTで、最高速度220km/hの性能を発揮しました。
セダンやターボ車などを追加
また、サスペンション形式はフロントにダブルウィッシュボーン式、リアに5リンク・リジッド式が採用されました。ブレーキはフロントがベンチレーテッド型の4輪ディスク式で、ステアリング形式はパワーアシスト付のラック&ピニオン式が採用されました。一方装備面では、パワーウィンドウやリモコンドアミラーが標準装備されました。
そしてデビューした年の後半に、2L直4DOHC NAエンジン(最高出力137ps/最大トルク17.5kgm)が追加されました。次いで1986年にZF製の4速トルコン式ATの選択が可能になり、翌1987年には異なる意匠のフロントマスクとノッチバックのフォルムを持つ4ドアセダン「CD」がラインナップに加わりました。
続いて1989年、2.3L直4DOHC NAエンジン(最高出力152ps/最大トルク21.6kgm)が追加され、追って翌1990年には、このエンジンにターボ版(最高出力200ps/最大トルク33.7kgm)が加わりました。さらに1991年、それまでのCCに代わるボディ・バリエーションとして、フロントまわりやリアまわりの造形を一新した5ドアハッチバック「CS」が登場しました。
続いて1994年、フェイスリフトの実施と同時に3L V6DOHC NAエンジン(最高出力213ps/最大トルク27.5kgm)を搭載する「V6グリフィン」が追加されました。そして1997年に後継モデル「9-5」が登場したことを受け、翌1998年をもって生産終了となりました。9000は、日本市場にも各ボディおよび各エンジン搭載モデルが導入されました。