2002年に「RX-7」が生産終了となり、一旦マツダ・ロータリーエンジン車の系譜は途絶えましたが、翌2003年4月、新たなロータリーエンジン搭載スポーツカーとして「RX-8」が発売されました。走りに特化したピュアスポーツモデルであったRX-7とは異なり、居住性にも配慮しグランツーリスモ的な性格を備えているのが特徴でした。
観音開き4ドアが特徴のボディ
スタイリングは、低いボンネットフードや曲線的なボディラインなどはRX-7譲りでしたが、後席のスペースを拡大する為キャビンが大きく取られた事と、後部ドアを備える4ドア仕様になった事が大きな相違点でした。後部ドアは、「フリースタイルドア」と称する観音開きタイプで、かつピラーレス構造が採用されました。
ドアノブが目立たないようインビジブル処理されている為、一見すると2ドアクーペのように見える点も特徴でした。後席の居住性は、オケージョナル2に過ぎなかったRX-7とは異なり、大人2人が長時間座る事の出来る空間が確保されていました。但し、後部ドアを開ける為には、先に前部ドアを開ける必要があるという使い勝手の制約がありました。
ボディサイズは、全長4,435mm×全幅1,770mm×全高1,340mmで、前述した居住性重視の設計によりRX-7より一回り拡大されていました。それに伴い、車両重量も1,310kg~1,330kgと若干重くなりました。プラットフォームはRX-7と同じ型式を踏襲しつつ、ホイールベースを2,700mmに延長するなどの変更が加えられました。
エンジンがNA化され、安全装備が充実
エンジンは、13B型の系譜である13B-MSP型で、654cc×2ローターという基本構成は変わらないものの、ハイパワーを追求する為ターボチャージャーが装着されていたRX-7とは異なり、燃費性能・環境性能を重視した為NAとなりました。チューニングの相違により「スタンダード」と「ハイパワー」の2種類のユニットが用意され、最高出力と最大トルクは前者が210ps/7,200rpm、22.6kgm/5,000rpmで、後者が250ps/8,500rpm、22kgm/5,500rpmでした。
トランスミッションは、スタンダードには5速MTと4速トルコンATが、ハイパワーには6速MTが組み合わせられました。駆動方式は、RX-7と同様フロントミッドシップによるFR方式で、前後重量配分50:50を実現していました。又、EBD(電子制御制動力分配システム)やDSC(横滑り防止装置)を装備するなど、安全装備も充実していました。
2008年3月にマイナーチェンジが実施され、フェイスリフトとアルミホイールの大径化により外観のイメージを刷新すると共に、ボディ剛性の強化や空力特性の改善、エンジンの基本性能改善など、様々な変更が行われました。同時に、エンジンのスペックも変更され、最高出力と最大トルクはスタンダードが215ps/7,450rpm、22kgm/5,500rpm、ハイパワーが235ps/8,200rpm、22kgm/5,500rpmとなりました。又、ATが多段化され、6速となりました。
現時点で最後のロータリーエンジン搭載車
RX-8は、世界で唯一のロータリーエンジン搭載モデルとして稀少な存在であったと共に、実用性の高さとスポーツカーらしい操縦安定性を兼ね備えていました。しかし、燃費はRX-7よりは改善されたものの、9km/L~10km/Lという数値は決して芳しいものではなく、ロータリーエンジンの課題として最後まで残りました。
そして、販売台数が徐々に減少していた為、合理化により2012年6月を持って生産終了となり、現時点では最後のマツダ・ロータリーエンジン搭載車となっています。