ここ数年、アテンザ、CX-5などの魂動デザインやスカイアクティブテクノロジーを導入し新世代商品群のラインナップに移行し、ひと昔前の印象からするとスタイリッシュなブランドイメージとなったマツダだが、更なる展開が動き出している。
基本モデルの車名をMAZDA○に変更
2019年7月、アクセラのフルモデルチェンジに合わせて車名をMAZDA3に刷新した。
MAZDA3はアテンザから始まった新世代商品群の中で“二巡目”となるフルモデルチェンジとなり、イメージが浸透した第1世代から更なる発展が求められる重要なモデルと言える。
高い質感と新エンジン“スカイアクティブX”
MAZDA3はこれまでマツダが取り組んできている質感の高さをさらに進化させると共に、新しいパワーユニットとして開発を進めてきたスカイアクティブXという新しいガソリンエンジンを初搭載したモデルとなる。
スカイアクティブX搭載のMAZDA3は現時点ではまだ発売が開始されていないが、パワーユニットの出来としては評判が良さそうであるが、価格的にはMAZDA3同等グレードの2.0Lガソリンモデルに対し約50万円のアップとなり、決して大ヒットが約束されている訳ではない。
MAZDA6は次のモデルからFRへ
アテンザのモデル末期にMAZDA6へと車名変更を実施したが、次期モデルでは新開発のFRプラットフォームへの移行が公表されている。現在のFFモデルでもデザイン的な評価は高いが、BMWやメルセデスベンツはもとより、アルファロメオも上級モデルはFRプラットフォームに移行しており、それらプレミアムブランドに食い込むにはFRプラットフォームの導入が必須であるとの考えとなっている。
直列6気筒エンジンも開発
マツダの公表しているブランド戦略の中で「Largeアーキテクチャー」と呼ばれるモデルはFRプラットフォームだけでなく、パワーユニットについても記述がある。その一つが直列6気筒エンジンである。
好景気だった頃にはトヨタもスープラなどに直列6気筒エンジンを採用していたが、パッケージング効率などの点から採用車種が限定される事もあり、現在ではBMWのみとなっている。トヨタは新型スープラでBMW製の直列6気筒を搭載しているが自社開発には至っていない。世界シェアとしては小規模のマツダが直列6気筒エンジンを市販化するというはかなり大きな決断と言える。
直近の経営状況はかなり過酷に
一方でマツダの直近の経営状況はあまり好調とは言えない。2020年3月期 第1四半期(4-6月)決算では、グローバル販売台数が対前年12%減の35万3千台、売上高 8,489億円、営業利益 70億円、当期純利益 52億円と売上高営業利益率は0.8%に留まっている。
さらに現在進行中となる第2四半期(7-9月)は、為替が現在1ドル=105.4円の円高に振れており、直近の販売状況を踏まえると四半期では赤字となりそうな状況にある。
ただし第3四半期以降は販売台数が期待できるCX-30の販売開始が控えており、販売台数においては上積みが期待できる。
ブランド確立のカギは店舗の再構築とハイパフォーマンスモデルの投入
2000年頃のラインナップと比べると、直近のマツダ車ラインナップは統一感もありクオリティも増した印象が強い。一方で販売価格は以前よりは値引き頼りから脱却しつつあるものの、クオリティの割にはまだお買い得感が強い。売れ筋SUVのCX-5も2,570,400円(消費税8%込)からと、サイズや質感を考えるとかなりのバーゲンプライスと言える。
課題の一つは商品群の変化に対して販売網が追い付いていない事がある。中心的車種が次世代商品群に移行した一方で、販売の現場であるディーラーは旧来のままとなっている。現在のディーラーに足を運んだ印象は決して悪くなく、むしろ好印象ではあるものの、レクサスや外車ディーラーと比べるとどうしても普通の販売店という印象となってしまう。
もちろんマツダもそれを認識していて、黒を基調とした新型店舗を徐々に増やしてはいるが、新型店舗へのリニューアルはかなり設備投資としての負担も大きく、一気呵成には難しい。
もう一つの課題は、ハイパフォーマンスモデルの欠如と言える。以前はマツダにもマツダスピードがあり、それを関したモデルをラインアップに加えていた事もあるが、現在は途絶えている。BMWにはM、AUDIにはSとRSというハイパフォーマンスモデルが用意されており、かなりの価格アップでも一定の人気を持っている。
バブル崩壊後の深刻な経営危機を経験したマツダで、現在の経営幹部はその経営危機を経験している。無茶を続ければ悪夢再びとなりかねないが、慎重ながらも大胆な攻めの姿勢を期待したい。