1964年にデビューしたポルシェのスポーツカー「911」は、モデルチェンジで代を重ね1998年に1月発売された「996型」で5代目となりました。それまでの大規模なマイナーチェンジレベルとは異なる初のフルモデルチェンジとなり、古典的な空冷エンジンがついに水冷化された他、弟分の「ボクスター」をパーツを共有するなど、4代目993型から全面的に刷新されたモデルとなりました。
ボディは拡大されるも軽量に
スタイリングは、初期型においてはフロント廻りのパーツをボクスターから流用した為に雰囲気も類似したものとなり、空力特性にも配慮したデザインを採用した事でCd値が993型の0.33から0.3に向上しました。ボディサイズは、まず最初に登場したNA・RR仕様の「カレラ」は全長4,430mm×全幅1,765mm×全高1,305mmで993型から一回り拡大され、ホイールベースも80mm近く延長され2,350mmとなりました。
車両重量は1,320kgで、ボディ拡大にも関わらず993型の同一仕様と比較して50kg軽量化されました。これまで通りリアに搭載されるフラット6は、水冷化と同時にDOHC化され、排気量が3.4Lに縮小されました。スペックは最高出力300ps/6,800rpm・最大トルク35.7kgm/4,600rpmに向上し、最高速度は13km/hアップの280km/h、0-100km/h加速も0.1s短縮され5.2sとなりました。
トランスミッションは6速MTの他、これまでの4速から5速に多段化されたトルコン式AT「ティプトロニックS」が設定されました。サスペンションは、形式こそ993型同様のフロント:マクファーソンストラット/コイル式・リア:マルチリンク/コイル式ながら、ボクスターと共通の物に一新されました。そして同年4月にオープンモデルの「カレラカブリオレ」が、更に10月にはフルタイム4WD仕様の「カレラ4」が追加されました。
様々な高性能モデルを追加
そして2000年3月、3.6Lターボエンジンを搭載する「ターボ」が発売されました。ボディサイズは全長4,435mm×全幅1,830mm×全高1,295mmで、恒例に従いNA車よりもワイド化され、車両重量は1,540kgとなりました。駆動方式は993型同様フルタイム4WDのみの設定で、エンジンのスペックは最高出力420ps/5,700rpm・最大トルク57kgm/2,700~4,600rpmでNA車同様993型から向上し、最高速度304km/h・0-100km/h加速4.2sの性能を実現しました。
次いで2001年6月、3.6Lターボエンジンを最高出力462ps/5,700rpm・最大トルク63.2kgm/3,500~4,500rpmまでチューンナップして搭載するRRモデル「GT2」が発売されました。車両重量が4WDの「ターボ」から100kg軽量化されると共に全高が20mmローダウンされ、6速MTとの組み合わせによる動力性能は最高速度315km/h・0-100km/h加速4.1sに向上しました。
更に同年12月、ターボ用のワイドボディに3.6Lに拡大されたNAエンジン(最高出力320ps/6,800rpm・最大トルク37.7kgm/4,250rpm)を搭載した「カレラ4S」が追加されました。そして翌2002年9月にマイナーチェンジを実施し、フェイスリフトやボディ剛性の強化などが行われた他、カレラ及びカレラ4のエンジンがカレラ4S同様の3.6Lユニットに置換されました。
カレラクーペの場合で車両重量は25kg増加したものの、最高速度は5km/hアップの285km/h、0-100km/h加速は0.2s短縮され5sとなりました。次いで2003年9月、ターボ用をベースにNA化したエンジンを搭載したホットなRRモデル「GT3」及び軽量版の「GT3RS」が発売されました。エンジンのスペックは最高出力381ps/7,400rpm・最大トルク39.2kgm/5,500rpmで、GT3RSの動力性能は最高速度306km/h・0-100km/h加速4.4sでした。
そして2004年8月、後継モデルの「997型」にバトンタッチされ生産終了となりました。