BMWは1989年のフランクフルトモーターショーにおいて、「6シリーズ」の後継モデルとなる高級2ドアクーペ「8シリーズ」を発表、日本には翌1990年3月に導入されました。6シリーズよりも車格が1ランク上がり、動力性能の向上や装備の充実が図られたプレミアムモデルでした。しかし、人気面ではライバルの「メルセデス・ベンツ・SLクラス」に及びませんでした。
空力特性の優れたハードトップボディを採用
プラットフォームは「7シリーズ」がベースで、ボディは2+2シーター仕様のセンターピラーレス・ハードトップでした。スタイリングは、かつてのスーパーカー「M1」を彷彿とさせるリトラクタブルヘッドランプ採用の低いノーズが特徴で、Cd値0.29を実現するなど空力特性にも優れていました。ボディサイズは全長4,780mm×全幅1,855mm×全高1,340mmで、6シリーズから全長と全幅が拡大されました。
ホイールベースも延長され2,684mmとなった他、車両重量はハードトップ化や衝突安全対策により大幅に増加し、1,850~1,930kgとなりました。サスペンション形式はフロントがマクファーソンストラット式で、リアは「インテグラルアーム式」と呼ばれる5リンク式が採用されました。駆動方式はFRを踏襲し、発売当初搭載されたエンジンは「750i」と共通の5L V12SOHCで、グレード名は「850i」でした。
スペックは最高出力300ps/最大トルク45.9kgmで、トランスミッションは本国仕様には6速MTと4速トルコン式ATが用意され、日本には後者のみが導入されました。装備面では、ABSや運転席SRSエアバッグシステムといった安全装備の他、パワーシートやCDオーディオシステム、クルーズコントロールなどの快適装備が備わる充実したものでした。
BMW 850CSiの走行シーン
V12ユニットの排気量を5.6Lに拡大
そして1994年3月に「850i」に代わり、V12ユニットの排気量を5.6Lに拡大し、最高出力381ps/最大トルク56.1kgmまでアウトプットを向上させた「850CSi」と、最高出力286ps/最大トルク40.8kgmのアウトプットを備える新開発の4L V8DOHCユニットを搭載する「840Ci」が設定されました。トランスミッションは「850CSi」が6速MTで、「850Ci」は6速MTと5速トルコン式ATのうち日本には後者が導入されました。
次いで1996年2月に「850CSi」がカタログ落ちし、同年8月には「840Ci」に代わり、V8ユニットの排気量を4.4Lに拡大し最高出力286ps/最大トルク42.8kgmのアウトプットが備わる「850Ci M-インディビデュアル」が設定されました。そして1999年5月に、レザーシートやウッドトリム、CDオートチェンジャーなどの豪華装備と共に、助手席にもSRSエアバッグシステムを装備した「840Ciリミテッド」が設定されました。
8シリーズの生産は同年をもって終了となり、「8」のモデルナンバーを持つ車種は2013年発表の「i8」まで途絶える事となりました。