アルファロメオは1984年に、1972年のデビューから既に12年が経過し旧態化していた「アルフェッタ」の後継車種となる、ミディアムクラスのニューモデル「90」を発売しました。当時のアルファロメオは経営難に陥っていた為、ニューモデルを新規に開発する基礎体力はなく、プラットフォームやパワートレインなど基本メカニズムの大半がアルフェッタからキャリオーバーされました。
アルフェッタと異なり4ドアセダンのみを設定
ボディのデザインは翌1985年に発売される事となる下位モデルの「75」と同様、エルマノ・クレッソーニ率いるアルファ・スタイリング・センター主導の元で行われ、ベルトーネの協力を仰いで完成させたものでした。ボディタイプは2ドアクーペも用意されたアルフェッタとは異なり、4ドアセダンのみの設定となりました。
スタイリングは、アルフェッタ譲りの直線基調のフォルムをベースにモダナイズが施されたものながら、新鮮味と普遍性にはやや欠けていました。ボディサイズは全長4,390mm×全幅1,640mm×全高1,420mmで、アルフェッタと実質的に同等のディメンションであり、ホイールベースも同一の2,510mmでした。又、車両重量も大差ない1,080~1,250kgでした。
サスペンション形式はアルフェッタと同一のフロント:ダブルウィッシュボーン式/リア:ド・ディオン・アクスル式を踏襲し、FRの駆動方式も勿論の事、エンジンをフロントに、トランスミッションをリアに搭載するトランスアクスルレイアウトもそのまま受け継がれました。その他、ラック&ピニオン式のステアリング形式や、4輪ディスク式のブレーキなどもアルフェッタから引き継がれました。
新たにV6エンジンも用意
発売当初用意されたエンジンは、アルフェッタ譲りの1.8L/2Lの直4SOHCガソリンNAに、2.5L V6SOHCガソリンNAとVM製2.4L直4SOHCディーゼル・ターボを加えた全4種類でした。最高出力/最大トルクの数値は、ガソリン1.8Lが120ps/17kgm、同2Lが128ps/18.3kgm、同2.5Lが156ps/21.4kgm、ディーゼル2.4Lが110ps/24kgmでした。トランスミッションは、全車に5速MTが組み合わせられました。
一方、保守的なモディファイに留まったエクステリアとは異なり、インテリアはイメージが一新されました。インパネのデザインが古典的かつ凡庸なイメージを与えたアルフェッタ・セダンに対し、水平基調のモダンで個性的なデザインに変貌しました。そして翌1985年に早くもフェイスリフトが実施されると共に、2L V6 DOHCガソリンNAエンジン(最高出力132ps/最大トルク17.9kgm)搭載車が追加されました。
その2年後の1987年にFF方式を採用した新世代のフラッグシップモデル「164」が登場すると、90は発売から僅か3年目にして生産終了となりました。