アルファロメオのグランツーリスモ「モントリオール」は、まずプロトタイプの「モントリオール・プロトタイプコンセプト」が1967年のモントリオール万博に出展され、様々な変更が施された市販バージョンが1970年に発売されました。同社として最高峰に位置するモデルであり、スーパーカーブームに沸いた当時の日本ではスーパーカーとして扱われ、ファンの間で人気を博しました。
ガンディーニデザインのボディ
ボディは2ドアのフィクスドヘッドクーペで、ベルトーネに所属していたデザイナー、マルチェロ・ガンディーニの手によりデザインされました。スタイリングは、プロトタイプコンセプトに対しディテールに変更はあるものの基本的なプロポーションはほぼ同一で、ドア後部のダクトスリットや大きなグラスエリアを持つハッチゲートなどが備わる、当時としては非常に先鋭的なものでした。
最大の特徴はユニークな開閉機構を持つセミリトラクタブルヘッドランプで、ヘッドランプ上部を覆うガーニッシュがヘッドランプの前を通過して下部に収納される方式が採用されました。
アルファロメオ モントリオールの解説動画(ヘッドライトの開閉は1:26頃)
ボディサイズは全長4,220mm×全幅1,675mm×全高1,205mmと、比較的コンパクトにまとめられていました。プラットフォームはプロトタイプコンセプトの「ジュリア・スプリントGT」用から、「1750/2000GT」系のものに変更されました。
V8エンジンとFR方式の組み合わせ
ホイールベースは1750/2000GTと同一の2,350mmで、車両重量は1,295kgでした。駆動方式はアルファロメオ恒例のFRが踏襲され、フロントに搭載されるエンジンは、プロトタイプコンセプトの1.6L直4(最高出力106ps)から「ティーポ33」から流用した2.6L V8DOHCのスピカ機械式燃料噴射仕様[最高出力235ps/6,500rpm(北米仕様は200ps/6,500rpm)・最大トルク24kgm/4,750rpm]に変更されました。
トランスミッションは5速MTが組み合わせられ、最高速度は220km/hに達しました。サスペンション形式は、1750/2000GTと同様のフロント:ダブルウィッシュボーン/コイル式・リア:トレーリングリンク/コイル式で、ブレーキは4輪ベンチレーテッドディスク式にアップグレードされました。タイヤは195/70VR14で、当時としてはワイドで扁平率の高いものでした。
室内は、ミニマムなスペースながら後席が備わる2+2シーター仕様で、インパネは大径のスピードメーターとタコメーターの下部に小さな電流計・油温計・水温計・時計が並ぶ6連メーターを採用し、ステアリングはウッド製3スポークでした。モントリオールは、1977年に生産終了となるまでの7年間におよそ3,700台が生産され、日本にもごく少数が輸入されました。