BMWは1955年9月のフランクフルト・ショーにおいて、戦前に発売された「327」の後継モデルとなるとともに、アメリカ市場を主要なターゲットとした新型高級スポーツカー「503」を発表、翌1956年5月に市販を開始しました。1951年にリリースされた「501/502」をベースとして開発され、エクステリア・デザインはドイツ人デザイナーのアルブレヒト・グラーフ・ゲルツの手により行われました。
3.2L V8エンジンを搭載
オールアルミ製となるボディのタイプは、2ドア・ピラーレスハードトップクーペと2ドア・カブリオレが用意されました。いずれも、ミニマムなスペースのリアシートが備わる2+2シーター仕様でした。スタイリングは、「501/502クーペ」よりもモダンかつ流麗なフォルムに変貌を遂げていました。ボディサイズは、全長4,750mm×全幅1,710mm×全高1,400mm(クーペ)/1,440mm(カブリオレ)でした。
ホイールベースは501/502シリーズと共通の2,835mmで、車両重量はクーペ/カブリオレともに1,500kgでした。駆動方式はFRを踏襲し、エンジンは502譲りの水冷3.2L V8OHVにゼニス・ツインキャブレターを装着したものが搭載されました。アウトプットは最高出力140ps/4,800rpm・最大トルク22kgm/3,800rpmで、502に搭載されたシングルキャブレター仕様から20psの出力向上を果たしていました。
4速MTを介してのパフォーマンスは、最高速度190km/h・0-100km/h加速13sと発表されました。サスペンション形式は501/502シリーズと共通で、フロントにダブルウィッシュボーン/横置トーションバー式、リアに3リンク/縦置トーションバー式が採用されました。また、ステアリング形式も同様のラック&ピニオン式が踏襲されたほか、4輪ドラム式のブレーキ形式も共通でした。
パワーウィンドウを装備
また、ホイール&タイヤは4.5J×16インチホイール+6.00H×16インチクロスプライタイヤの組み合わせが採用されました。インテリアは、丸型3眼式メーターが備わるインパネの上部やドア内張り、シートなどのカラーに派手な赤が設定されていました。一方で、ステアリングホイールは白い4本スポーク式が採用され、そのコントラストがアクセントとなっていました。
また、装備面ではパワーウィンドウが採用されるなど豪華なものでした。しかし、販売面では同時に発表された2シーター・スポーツカーの「507」ともども振るいませんでした。さらに、当時同社が深刻な経営不振に陥っていたこともあり、発売から僅か3年足らずの1959年3月に生産終了となりました。
生産台数は少なく、僅か413台に留まりました。後継モデルはすぐにはリリースされなかったものの、経営状態が上向いた1962年に実質的な後継モデルとなる「3200CS」がリリースされました。