BMWは1987年のフランクフルトモーターショーで、1959年に生産終了となった「507」以来となるオープン2シータースポーツカー「Z1」を発表しました。着脱式のボディパネルや上下に昇降する構造のドア、独特なリアサスペンションなど、数々のユニークな機構が投入された意欲作でした。ファンからも注目を集め、1989年に販売が開始される前に多くのバックオーダーを抱える事態となりました。
独特なボディ構造を採用
車体の基本構造はスチール製モノコックの骨格にFRP製のアウターパネルを架装したもので、近年の「ダイハツ・コペン」のように構造上骨格だけの状態での走行も可能でした。前述のドアは電動昇降式で、解放時はドアシルに格納される構造になっており、道交法上ドアを下した状態での走行も可能でした(※但しアメリカでは不可)。
スタイリングは、ロングノーズ・ショートデッキの古典的なプロポーションと斬新なディテールを併せ持ったもので、空力特性にも配慮されソフトトップを上げた時のCd値は0.36(トップ解放時は0.43)でした。ボディサイズは全長3,921mm×全幅1,690mm×全高1,277mm、ホイールベースは2,477mmで、車両重量は1,250kgでした。
BMW Z1のドア開閉機構
BMW Z1のエンジン音、走行シーン
多くのパーツを3シリーズから流用
サスペンション形式は、フロントが「3シリーズ(E30型)」から流用されたマクファーソンストラット式で、リアは同社が得意としてきたセミトレーリングアーム式に代わり、新開発された「Zアクスル」と呼ばれる凝った構造を持つダブルウィッシュボーン式が採用されました。その他、フロントがベンチレーテッド型の4輪ディスクブレーキや、ラックアンドピニオン式のステアリングもE30型3シリーズのパーツが流用されました。
タイヤは前後共に225/45VR16というサイズが採用され、駆動方式は同社伝統ともいえるFRを採用しながら、エンジンをフロントアクスル後方にマウントする事で49:51という理想に近い前後重量配分を実現していました。搭載されたエンジンは、325iに採用されていた2.5L直6SOHC・ボッシュMEモトロニック燃料噴射仕様で、最高出力170ps/5,800rpm・最大トルク22.6kgm/4,300rpmのスペックも同一でした。
トランスミッションは5速MTが組み合わせられ、最高速度219km/h・0-60mph加速7.9sの動力性能を発揮しました。又、アルピナをはじめ複数のチューナーの手によるコンプリートモデルも登場しました。Z1は発売前の人気こそ高かったものの、発売後には人気が急落した為、2年後の1991年には早くも生産終了となりました。総生産台数はおよそ8千台でした。
こうした不人気の影響で後継モデルはすぐには発売されず、それには1996年発売の「Z3」まで待たなければなりませんでした。