フェラーリは1984年3月のジュネーブ・ショーで、量販モデル「308GTB」をベースにグループBのホモロゲーションに準ずるモデファイを加えた少量生産モデル「288GTO」を発表しました。エンジン搭載方式が308GTBの横置きから縦置きに変更されると共に、ボディ外板にFRPが使用され軽量化が図られました。又、内外装とも殆どの部分に専用設計のパーツが採用されました。
より迫力あるスタイリングに
ボディタイプは、オープンボディのスパイダーも用意された308系とは異なりフィクスドヘッド・クーペのみの設定で、デザインは引き続きピニンファリーナにより手掛けられました。スタイリングは308GTBに類似しているものの、大きく張り出した前後のフェンダーや角形4灯式の補助ランプが備わるフロントグリルなど、より迫力ある雰囲気を醸すものとなっていました。
ボディサイズは全長4,290mm×全幅1,910mm×全高1,120mmで、308GTBから全長が60mm延長されると共に、全幅が190mmワイド化されました。又、ホイールベースも110mm延長され2,450mmとなった一方で、車両重量は115kg軽量化された1,160kgとなっていました。従来通りミッドシップマウントされるV8DOHCエンジンは、ボアの縮小により308GTBよりも排気量が僅かに小さい2,855ccとなりました。
フェラーリ 288GTOの走行動画
ターボ化により大幅にパワーアップ
同時にIHI製のツイン・ターボチャージャーが装備された他、燃料供給装置が308GTBのボッシュKジェトロニックからウェーバー・マレッリIAWシステムに変更されました。スペックは最高出力395HP/7,000rpm・最大トルク50.6kgm/3,800rpmで、308GTBを遥かに凌駕するものでした。組み合わせられる5速MTは、ファイナルも含め308GTBとはギアレシオが全く異なっていました。
パフォーマンスは最高速度305km/h・0-100km/h加速4.8sで、同年10月に登場した同社のフラッグシップモデル「テスタロッサ」の最高速度275km/h・0-100km/h加速5.8sを遥かに凌ぐ、当時の市販車としては世界トップレベルの性能でした。その他、4輪ダブルウィッシュボーン式のサスペンション形式やベンチレーテッドタイプの4輪ディスクブレーキ、ラック&ピニオン式のステアリング形式などは308GTBから受け継がれました。
一方でタイヤサイズは、308GTBが前後とも225/55VR415であったのに対し、パワーの増大に対応する為フロントが225/50VR16、リアが255/50VR16へとワイド&扁平化が図られました。288GTOは、生産終了となった翌1985年までの1年間に272台(諸説あり)が生産されたものの、日本への正規輸入は僅か1台のみで日本国内では非常に希少な存在でした。又、ホモロゲーションをクリアしFIAの公認も取得したものの、実際にレースに参加する事はありませんでした。