フェラーリは1992年に、1989年に生産終了となった「412」の実質的な後継モデルとなる2+2グランツーリスモ「456」を発表しました。源流を1970年代初頭まで遡る412からプラットフォームやパワートレインが一新された他、内外装とも大幅なモダナイズが図られました。4座GTカーながら性能も高く、2シーター・スーパースポーツの「512TR」に匹敵するパフォーマンスを備えていました。
ボディタイプは412同様、2ドア・フィクスドヘッド・クーペのみの設定で、デザインは引き続きピニンファリーナの手により行われました。スタイリングは、直線基調の412から一転し曲線基調の近代的なフォルムとなった他、空力特性にも配慮され0.345の優れたCd値を実現していました。ボディサイズは全長4,730mm×全幅1,920mm×全高1,300mmで、412よりもショート&ワイドなディメンションになりました。
新開発の5.5Lユニットを搭載
ホイールベースは100mm短い2,600mmとなり、車両重量はほぼ同等の1,690kgでした。駆動方式は、412同様のFRを踏襲すると共にトランスアクスルレイアウトが採用され、前後重量配分51:49を実現していました。エンジンは新設計の5.5L V12DOHCで、燃料供給装置にはボッシュ・モトロニックが採用され、10.6:1の圧縮比から最高出力436HP/6,250rpm・最大トルク56.1kgm/4,500rpmのアウトプットを発生しました。
トランスミッションは発売当初6速MTのみの設定で、最高速度300km/h・0-100km/h加速5.2sという第一級のパフォーマンスを発揮しました。その他、4輪ダブルウィッシュボーン式のサスペンションや、ABSが備わる4輪ベンチレーテッド式ディスクブレーキなどは412と形式上同一であった一方で、ステアリング形式はリサーキュレーティング・ボール式からラック&ピニオン式に変更されました。
ビッグマイナーで内外装を変更
そして1996年3月に、ZF製4速トルコン式ATを搭載する「456GTA」が追加されました。456GTと比較すると車両重量が80kg増加した他、パフォーマンス面では最高速度が2km/h低下し、0-100km/h加速が0.3s遅くなりました。次いで1998年にビッグマイナーチェンジが実施され「456M-GT/GTA」となり、エクステリア面ではフロント廻りとボンネットの形状が刷新されました。
それに伴い全長が33mm延長されたものの、車両重量も含めその他のボディスペックに変更はありませでした。又、インテリアも一新され、それまでの直線基調のインパネが「550マラネロ」風の曲線的なデザインに改められると共に、メーターレイアウトも変更されました。456Mは、その後は大きな仕様変更もなく2003年まで生産が継続されました。
尚、カタログモデルは前述のとおりクーペのみのボディ・バリエーションであったものの、特注モデルとしてオープンボディの「スパイダー」やステーションワゴンの「ベニス」が存在しました。