いすゞのスペシャリティカー「ピアッツァ」は、発売開始以来13年が経過し旧式化した「117クーペ」の後継モデルとして、1981年6月に発売されました。既存のコンポーネンツを活用しつつ、他に類を見ない美しいクーペボディを架装し、後には動力性能やハンドリングにも拘った事が特徴のモデルした。
未来的な内外装デザイン
スタイリングは、1979年のジュネーブショーで公開されたジウジアーロのデザインによるショーモデル「アッソ・デ・フィオーリ」をベースに、市販化に適合するよう若干の変更を加えたものでした。ボディ形状は4人乗りの3ドアハッチバッククーペで、ウェッジシェイプのシャープ造形と、低いノーズや大きなリアクォーターウィンドウが特徴でした。
又、空力特性にも拘り、当時としては優秀なCd値0.36を実現するなど、時代の水準を超えた未来的なデザインを持っていました。ボディサイズは全長4,385mm×全幅1,675mm×全高1,300mmで、全高を除き117クーペよりも一回り大きく、それに伴い車両重量も1,155kg~1,190kgと重くなっていました。
ダッシュボードのデザインも、デジタル式スピードメーターを備えるなど外観に劣らず未来的なもので、ステアリングから手を離さずにスイッチ類の操作が可能なサテライトスイッチが採用された事も特徴でした。その他、速度感応型パワーステアリングやパワーウィンドウが設定されるなど、当時としては豪華な装備を備えていました。
シャシーやパワートレインは既存のコンポーネンツを利用
一方、シャシーは専用設計ではなく、初代「ジェミニ」のものを改良して使用し、サスペンション形式もジェミニ同様の前ダブルウィッシュボーン式/後3リンク式でした。ジェミニとの相違点は、ホイールベースが35mm延長されて2,440mmに設定された事と、前後にスタビライザーが追加された事でした。しかし、既にジェミニ自体が旧式化していた事もあり、シャシー性能はやや不足気味でした。
エンジンは、117クーペから継承した1.9L直4SOHCのG200ZNS型(最高出力120ps/最大トルク16.5kgm)と、ジェミニ用の1.8Lエンジンを拡大した2L直4DOHCのG200WN型(最高出力135ps/最大トルク17kgm)の2種類が用意されました。トランスミッションは、それぞれに5速MTと4速トルコン式ATが用意され、駆動方式はジェミニ同様FRでした。
ターボ車やチューニング車を追加
1983年5月にマイナーチェンジを実施し、バックミラーが保安基準の関係で採用せざるを得なかったフェンダーミラーから、本来意図したスタイリングが実現出来るドアミラーへと変更されました。次いで翌1985年6月に、「アスカ」に搭載されていた2L直4SOHCターボエンジンにインタークーラーを装着した4ZC1型エンジン(最高出力180ps/最大トルク23kgm)を搭載したモデルが追加されました。
又、シャシー性能のアンバランスを解消すべく、同年11月には西ドイツ(当時)のチューナー「イルムシャー」が足回りのチューニングを手掛けたグレードが設定されました。そして1988年6月には、ロータスが足回りをチューニングし、リアサスペンションを5リンク式に改良したグレード「ハンドリング・バイ・ロータス」が設定されました。
初代ピアッツァは、当初は美しいスタイリングのみがセールスポイントであったものの、後にエンジンや足回りのパフォーマンスを改良し、トータルバランスが改善されました。しかし、販売網の弱さもあって、発売当初を除いて中盤以降は販売面で苦戦を強いられました。時がたった今では、その類稀なるスタイリングから名車として語り継がれています。
後継モデル:2代目ピアッツァ